第六十一話 稲葉山入城その七
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の櫓に登った。そこから美濃を見渡してだ。
彼はだ。共にいる帰蝶に問うたのだった。
「そなたの国じゃな」
「はい」
ここではだ。帰蝶は微笑んで夫の言葉に応えた。
次第に目から涙を流しだ。その美濃を見ながら言うのである。
「まさかこうして」
「戻れるとは思っていなかったか」
「夢の様です」
そこまでだというのである。
「まことに。こんなことが」
「しかし夢ではない」
信長も優しい声で妻に告げる。
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