第六十一話 稲葉山入城その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
それぞれ左右からだ。喚声が上がったのだ。
「な、何じゃ!?」
「この大きな喚声は一体」
「何があったのじゃ!?」
「何が起こったのじゃ!」
斉藤の軍勢が一斉に浮き足立つ。ここにだった。
墨俣から出て来た織田の軍勢の左右にだった。それぞれだ。
また青い軍勢が出て来た。その軍の先頭には。
「何っ、あれは柴田勝家ではないか」
「佐久間信盛もいるぞ」
二人の姿を見てだ。多くの者が驚きの声を挙げる。
「まずい、数もかなりじゃ」
「我等の倍以上はいるぞ」
「よくここまで来たな!」
そしてだ。あの声もだった。彼等にとってはやはり不意に聞こえてきた。
丹羽と木下の間からだ。青い具足に蔵、そして金と銀の陣羽織の男が出て来た。彼こそは。
「織田信長!」
「馬鹿な、今は清洲にいるのではないのか!?」
「それがどうしてここに」
「しかも主な家臣達も皆いる」
彼の後ろにだ。織田家の錚々たる面々が揃っていたのだ。
「しかもあの大軍は」
「左右の軍も合わせると」
「四万を超えているぞ」
「かなりの数だぞ」
織田のその大軍も見られる。
「あれだけの数がいればじゃ」
「我等なぞ一ひねりではないのか」
「四万は優に超えている」
「それに対して我等は一万」
「数はもうどうしようもないぞ」
「これでは」
こうだ。斉藤の兵達は囁き合ってだ。戦の前から飲まれていた。
しかもだ。織田軍の中にはだった。
「おまけにあちらには安藤様がおられるぞ」
「稲葉様に氏家殿もだぞ」
「不破様までおられるではないか」
「他の家臣の方々も国人の方もとは」
「これではじゃ」
兵達は彼等の姿も見てだ。そのうえでさらに浮き足立つ。
それを見てだった。信長は満足した面持ちになる。そのうえでだ。
後ろに控える池田にだ。こう言うのだった。
「効果覿面じゃな」
「どうやらあちらは全く予想していなかったようですな」
池田もだ。その彼等を見て言う。
「殿がここにまで来られることを」
「そうじゃな。しかもじゃ」
「はい、織田の主力が一気に来るとは」
「度肝を抜かれたな、間違いなく」
「斉藤は予想しておらんかった」
「情報を掴めてもいませんでしたな」
そのこともだ。彼等は察したのである。
「何一つとして」
「だからああなっておるのか」
信長は今度は斉藤の兵達を見る。見れば確かに少なくなっている。しかしそれ以上にだ。彼等の弱体化が見て取れたのである。
浮き足立つ彼等を見てだ。信長はさらに話すのだった。
「脆いな」
「確かに。ここで一撃を加えれば終わります」
「よし、決まりじゃな」
ここまで話してだ。信長は意を決した顔になってだ。
そのうえでだ。前に出たのだった。これを見てだ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ