第六十一話 稲葉山入城その一
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第六十一話 稲葉山入城
斉藤龍興は一万の軍を率いて墨俣に向かっていた。その中でだ。
残っている家臣達にだ。こう問うたのである。
「今ならじゃな」
「はい、墨俣の城にいる者は僅かです」
「そうはいません」
こうだ。家臣達も彼に答える。
「ですから今のうちに墨俣の城を陥落させましょう」
「そしてそのうえで、です」
「そうじゃな。もう一度美濃の統治を固める」
「あの城を陥落させれば織田についている者も戻りましょう」
「そうなります」
「ふん、戻って来た時は見ておれ」
その時はどうしてやるかとだ。龍興は己の考えも見せた。
「しかし何はともあれじゃ」
「はい、墨俣の城をです」
「陥落させましょう」
まずはそこからだった。城を陥落させてからだというのだ。
彼等は美濃を手中に収めなおす為にだ。城を攻めんとしていた。しかしだ。
その城にはだ。既にだった。丹羽が己の軍と共に入っていた。
そしてここでだ。さらにだった。
「殿も間も無く来られるな」
「はい、明日にもです」
「来られます」
丹羽に同行してきていた堀と原田が述べる。
「丁度斉藤の者達も来るのは明日になりますな」
「物見の報だと」
「一万で稲葉山の城から来るとなると」
ここでだ。丹羽は織田家の基準から考えて述べた。
「今一つ遅いな」
「そうですな。我等ならもうです」
「ここにまで来ておりますな」
このことを梶川と幸田も言う。彼等も丹羽と共に来ているのだ。
その彼等もだ。丹羽と同じ意見だった。
「やはり遅いですな」
「軍の動きが」
「用兵が出ておるか」
丹羽は考える顔で述べた。
「今の斉藤の用兵はその程度か」
「そうでしょうな。しかしその一日の時間がです」
「我等にとって大きいものになりますな」
「明日には殿がこの城に来られる」
丹羽はまたこのことを言う。
「そして左右からはじゃ」
「権六殿と牛助殿もですな」
「それぞれ来られますな」
「あの御二人も明日に来られる」
また話す彼等だった。
「では我が軍は全軍を以てですな」
「斉藤の軍勢の相手をできますな」
「勝てるな」
その戦力を考えてだ。丹羽はまた述べた。
「それも最高の形でな」
「よし、それならですな」
「勝負は明日からですな」
「今日は英気を養うとしよう」
穏やかな顔でだ。丹羽は言ってだった。
彼等は信長達の到着を待っていた。そうしてだった。
その明日になった。明日になるとだ。
丹羽は木下と共にだ。全軍で城を出た。
その全軍で一万の斉藤の軍勢と対峙する。その青い軍を見てだ。
龍興はだ。笑って周りに話した。
「何じゃ。自分達から出て来たのか」
「その様ですな。こ
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