第六十話 四人衆帰順その十三
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「それに装備じゃな」
「その二つですか」
「戦は数じゃ」
信長はあらためてだ。こう言い切ってみせた。
「数はあってこそ戦になる」
「では桶狭間は」
「あれはやるべきではない」
池田にだ。あの戦のことは素っ気無く述べる。
「二度とやるべきではない」
「あれだけ見事な勝ちだったのにですか」
「兵は多く集めそのうえで勝つものじゃ」
信長の言葉は変わらない。
「あれはあえてああして今川を油断させたのじゃ」
「確かに。今思い出せばそうですな」
主の言葉にだ。生駒も頷く。
「あの時は」
「今川は篭城しそのうえで城の外の兵を呼ぶと思っておった」
兵法の常道だ。義元や雪斎でなくとも思う。
実際にだ。その場にいる雪斎と朝比奈泰朝も言う。
「我等もそう見ていました」
「まさか急に本陣に来るとは」
「あの時は長期戦を何としても避けたかった」
今攻めている他ならぬ斉藤が控えているからだ。戦が長引けばそれで彼等が攻めてくるのを読んでだ。信長は動いたのである。
「それでああしたがじゃ」
「あれで終わりですか」
「奇襲は」
「戦での奇襲は危険を伴う」
信長は言う。
「それで二度もやるのはじゃ」
「されませんか」
「やはり」
「うむ、少なくともわしはせぬ」
こう言うのだった。
「だからじゃ。今回もじゃ」
「あくまで正攻法ですか」
「数をもとにした」
「確実に勝つ」
また言うのであった。
「この戦もじゃ」
「むっ」
池田が声をあげた。するとだ。
信長の前に青い具足に青い旗を背に立て馬に乗った者達が来てだ。そのうえで畏まって報告してきたのだった。その報告は。
「柴田様より伝言です」
「佐久間様よりです」
それぞれの軍を率いる二人からだというのだ。
「今より墨俣に向かわれるとのことです」
「そう殿に伝えとのことです」
「何と、御二人共か」
それを聞いて少し驚きを見せたのは池田だった。
「それはまた」
「ははは、流石よのう」
しかしだ。信長はだ。
その伝令の報告にだ。顔を崩して笑ってこう言うのだった。
「織田家の赤鬼と青鬼じゃ」
「殿の動きに合わせてでしょうか」
「わしが出陣すると共にわかったのじゃ」
そうだったというのだ。軍勢の動きがだ。
「それでじゃ。わしの伝令が来る前にじゃ」
「動かれたというのですな」
「左様。ならば話が早い」
信長はまた言った。
「このまま進むとしよう」
「左様ですか」
「ただしじゃ」
ここでだ。こうも言う信長だった。
「権六も牛助もわしが幼い頃より仕えておるが」
「何かありますか?」
「わしの考えを読んでおるわ」
このことについてはだ。信長は曇った顔で述べていく。
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