第六十話 四人衆帰順その十二
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「さすればか。そうか」
「そういうことです」
「ふむ。ではじゃ」
信長も坂井もだ。互いにだ。
にやりと笑いだ。ここで話す。
「そうするか」
「そうされるのがいいかと」
お互いにわかっている口調だ。そのやり取りのうえでだ。
あらためてだ。信長は森に問うた。
「して権六と牛助じゃが」
「御二人の軍もですね」
「うむ。墨俣に呼んでおるな」
「既に伝令は出しています」
森もだ。すぐに答えた。
「ですから墨俣においてです」
「あの者達とも合流するな」
「そうなるかと」
「ならばよい」
森の報告にだ。信長は満足して述べた。
「確かに今後美濃の東への備えは大事じゃが」
「それより前にですな」
「まだ武田は動けぬ」
信長はわかっていた。信玄が信濃の政を優先させることをだ。そして彼がさらに駿河や遠江の政もすることもだ。彼はわかっていたのだ。
そのうえでだ。彼はこう言ったのである;。
「だから今はじゃ」
「美濃の東への備えはいいですか」
「暫し兵を置かぬ位ならよい」
「暫しですか」
「そうじゃ。暫しじゃ」
期間は限定する。しかも短く。
「あまり長く空けておると本当に来るからのう」
「そうですな。武田は油断できませぬ」
生駒も出て来て話す。
「甲斐の虎の名は伊達ではありませぬ」
「その武田に上杉じゃ」
信長は謙信の名も出した。
「上杉も脅威じゃ」
「領土欲はないにしてもですな」
「あまりにも強い」
信長はこう生駒に返した。謙信の強さは最早神話になっていた。
その神話の如き強さについてだ。信長は信玄を引き合いに出して述べた。
「おそらく互角の兵力で四つに戦ができるのは武田だけじゃ」
「ですな。龍に対することができるのは虎だけ」
「まこともそうですな」
このことはだ。家臣達も応える。
「上杉には北条ですら対決を避けておりますから」
「相模の獅子ですら」
「賢明じゃ」
信長は今度は北条を褒めた。明らかによい評価を下していた。
「あれはそうそう勝てるものではない。兵が二倍か三倍あっても勝てぬ」
「そうですな。まして我等は」
森は織田の兵から話した。
「天下の弱兵ですしな」
「確かに織田の兵は弱い」
将としてだ。信長も熟知していることだった。
「しかしそれとはまた別の次元でじゃ。あの男は強過ぎる」
「まさに毘沙門天ですな」
「あの強さは」
「黒の軍勢は鬼よ」
上杉軍の具足や旗の色は黒だ。その色からの言葉だ。
「鬼神の軍勢よ」
「ではその鬼神に勝つにはどうすればいいでしょうか」
ここで信長に問うたのは池田だった。
「その圧倒的な強さに対しては」
「数じゃな」
まずは信長らしい返答だった。しかしそれだけではなかった。
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