第六十話 四人衆帰順その十一
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「では殿、美濃を手に入れられれば」
「すぐに上洛でしょうか」
「そうしたいがのう」
ここでだ。信長はぼやいてみせた。その彼にだ。村井がこう言ってきたのである。
「大義名分が必要ですな」
「そういうことじゃ。公方様から要請があればよい」
信長もだ。実際このことについて話してきた。
「しかしじゃ。それなくして上洛してもじゃ」
「朝日将軍ですな」
村井はだ。この称号を出してきた。
「木曾義仲公になりますな」
「そうじゃ。まああの御仁はいささか気の毒じゃった」
信長はその木曾義仲には同情も見せた。
「父親を幼い頃に同じ源氏に殺され自身もやはり同じ源氏に殺された」
「平家物語ですな」
「そうじゃ。あれは実に因果な話じゃ」
平家物語全体についてだ。信長はこう述べたのだ。
「ああした風にはなりたくないのう。木曾殿のニの舞はな」
「だからこそですな」
「うむ、都には大義名分を得て入りたい」
信長は言った。
「そしてじゃ」
「さらにありますか」
「木曾殿の兵みたいなことをしては駄目じゃな」
都で舞い上がりだ。狼藉をすることはだというのだ。
「足軽共はその手綱をしかと握らねばな」
「そうしてですな」
「そうじゃ。万端整え細かいところまで気を配ってじゃ」
そうしてからだというのだ。信長は上洛について政から考えていた。戦についてはだ。この時は然程考えてはいなかった。まずは政だった。
「そのうえでじゃ」
「都に入られますな」
「そうする。入ってからもじゃ」
そこまで考えるのもだ。彼は怠ってはいなかった。
「しかとするぞ」
「それでは」
「さて、少し先の話はこれ位にして」
信長はこの話はここまでにしてだ。そのうえでだ。
周りの家臣達にだ。彼等と同じく馬上において言ったのだった。
「まずは目先のことじゃ」
「戦のこと」
「それですな」
「さて、面白い考えはあるか」
信長は家臣達に問うた。
「この度の戦ではじゃ」
「はい、それではです」
ここで出たのは坂井だった。彼はこう信長に話した。
「まず我等は数で大きく勝っています」
「そうじゃな。四倍以上じゃ」
「しかも槍は長く鉄砲も多いです」
「普通にやっても勝てるな」
「ですがここで」
坂井はだ。信長にさらに話す。
「完全に勝つにはです」
「どうするというのじゃ?」
「少し工夫が必要かと」
「工夫か」
「戦は何でしょうか」
坂井はここで信長に問うた。
「一体何でしょうか」
「決まっておる。勝つことじゃ」
「そうですな」
「やるからには勝たねばならん」
そしてだ。信長はこんなことも言った。
「この場合は攻めてじゃな」
「ではどうして攻めるかですな」
「城や兵を攻めるのは下じゃ」
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