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戦国異伝
第五十九話 一夜城その五
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「殿が用意されています」
「ならすぐにでもはじめられる」
「墨俣での築城がですか」
「そうじゃ。見ておれ」
 こう言ってであった。木下は弟を連れてだ。
 そのうえでまずは蜂須賀の屋敷に行きだ。彼と話してだ。
 それから九鬼とも話した。それが終わりだ。
 意気揚々として己の屋敷に戻る。その道でだ。
 彼も秀長も共に馬に乗っているがその馬上でだ。弟に言うのだった。
「どうじゃ、ああすればじゃ」
「ううむ、そうしたやり方もありますか」
「やり方は一つではない」
 だからだというのだ。
「こうしたやり方もあるからじゃ」
「確かに。いい勉強になり申す」
「では今日はその用意をしてじゃ」
「明日にですか」
「出る。そしてじゃ」
「夜に墨俣に着く様にしてですな」
 秀長は兄の話を頭の中で反芻しながら述べる。
「そのうえで」
「うむ、取り掛かるぞ」
「わかり申した。それでは」
 秀長も兄の言葉に頷く。そうしてだった。
 彼等は多くの舟にだ。木やら石やらを積みだ。そのうえでだ。
 川を上っていく。その舟達を見てだ。
 丁度それぞれ出陣しようとしている柴田と佐久間がだ。いぶかしみながら話をした。
「はて。川を使ってか」
「そうして墨俣に向かうのか?」
「舟は二郎に借りたものの様じゃが」
「して舟を操っておるのは」
 二人はその舟と乗っている者達まで見て話す。
「あれは小六の者達じゃな」
「うむ、川並衆じゃ」
 佐久間は柴田のその言葉に頷きながら述べた。
「あの者達は忍じゃがそれと共に川辺に住んでおったしのう」
「その商いやらで生きておった」
「舟を、川でそれを使うのは手のものじゃしな」
「しかも二郎の下の者達までおる」
 彼等はというと。
「水の戦なら何処でもできるからのう」
「だからあの者達も借りてじゃな」
「そうしてか」
 こうしたやり取りの中でだ。まず佐久間がだった。
 深く考える顔になりだ。柴田に対してこう言った。
「のう、猿じゃが」
「切れるというのじゃな」
「それもわしが考えておった以上にじゃ」
「そうかもな。ああした考えはわしにはない」
「わしもじゃ」
 佐久間は柴田に言葉を返した。
「とてもじゃ。川を上ってそれで木や石を丸々運んでそれで向かうとはな」
「兵も既におるしな」
 見ればだ。ちゃんと兵達もいる。木下に抜かりはなかった。
「では城を築いてすぐにじゃな」
「兵も入れて守る」
「猿はそこまで考えておるのか」
 ここでだ。柴田はこう言った。
「正直わしはあの猿はじゃ」
「嫌いか」
「どうにも好きになれぬ」
 難しい顔でだ。佐久間に話した。
「馬が合わぬというかのう」
「そうか?見たところ結構仲良くやっておるぞ」
「そう見えるか?」
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