第五十九話 一夜城その四
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前田とのやり取りの後でだ。木下は己の屋敷に戻りだ。
弟の秀長にだ。こう言ったのだった。
「さて、それではじゃ」
「兄上、今度もですな」
彼も兄が言うその場に共にいた。それでだ。
難しい顔になりだ。こうその兄に言うのだった。
「派手なことをやると言われましたな」
「ははは、呆れたか」
「呆れたならば今ここにはおりませぬ」
そうだとだ。彼は兄に言葉を返した。
「感心したからおるのです」
「感心しておるのか」
「これが成功すれば我等は美濃を手に入れられまする」
「そうじゃ。そしてわしもそなたもじゃ」
「功績によりさらに取り立てられますな」
「どうじゃ。いい話であろう」
「はい、母上がこれでまた楽になります」
彼等の念頭にあるのはだ。やはり母親のことだった。とりわけ木下はだ。
真剣な顔でだ。秀長に言うのだった。
「あそこまで苦労されてきたのじゃ。これからはじゃ」
「左様ですな。楽に」
「暮らしてもらいたい。その為にはじゃ」
「我等が功績を挙げ富と名声を手に入れ」
「母上に立派な服を着てもらいよい屋敷に住んでもらい」
そうしてだというのだ。
「美味いものをたらふく食ってもらい多くの者に囲まれてじゃ」
「楽にですな」
「そうして過ごしてもらうことじゃ」
だからこそだというのである。
「わし等はもっともっと功績を挙げるぞ」
「その一つとして墨俣ですな」
「あそこに城を築く」
木下はここで確かな声になった。
「よいな。そしてその為にはじゃ」
「あの地はまさに稲葉山の死命を決する地です」
「それだけにやがては奪い返しに来るしのう」
「特に城を築くことは許しません」
その城を足掛かりとして稲葉山の城を攻められるからだ。そのことは最早火を見るより明らかだったし実際に信長もそう考えている。
だからだ。斉藤としてもなのだ。無論木下兄弟もこのことを把握している。
それでだ。彼等は今ここで話すのだった。
「築くのに時をかけてはなりませんが」
「そうじゃ。しかし清洲から墨俣まではいささか遠い」
「城を築くのはどう考えても容易ではありませんぞ」
「うむ。しかしじゃ」
「しかし?」
「まずは小六の力を借りよう」
「小六殿の」
蜂須賀の名を聞いてだ。秀長は。
今度は目を少しだけ剥いてだ。兄に問い返した。
「今度は忍はお門違いと思いますが」
「いや、小六じゃ」
「それでも小六殿だというのですか」
「そうじゃ。あ奴の力を借りる」
そしてだ。もっと言うのだった。
「あ奴と。その衆の力をな」
「川並衆の?」
「そして二郎殿じゃが」
今度は九鬼だった。彼の名も出したのである。
「二郎殿とも話がしたい」
「小六殿に二郎殿ですか」
「これだけではわから
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