第五十九話 一夜城その一
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第五十九話 一夜城
清洲に戻った信長はすぐにだ。家臣達を集めて問うた。
「ではじゃ」
「はい、墨俣にですな」
「城を築く」
「それですな」
「そうじゃ。口で言うのは一言じゃ」
そうだとだ。信長はまず言った。
そのうえでだ。己の家臣達にあらためて問うたのだった。
「しかしじゃ。それを果たすのはじゃ」
「口で言うより何倍も難しいですな」
「いや、何十倍か」
「少なくとも簡単ではありませぬ」
「さて、その難しいことに誰が挑む」
信長は家臣達にまた問うた。
「誰がおる」
「では」
ここでだ。名乗ってきたのは。
柴田だった。彼がまず名乗り出るのだった。
「わしが」
「権六か」
「殿、それがしにお任せ下さい」
こうだ。柴田は自ら信長に言った。
「さすれば城は必ずやです」
「建つというのじゃな」
「左様です。そのうえで美濃を手に入れてみせましょう」
自信に満ちた笑みを浮かべてだ。信長に言うのである。
「是非です。わしにです」
「いや、待て」
しかしだ。信長はこう言って柴田を止めた。
主のその言葉を聞いてだ。柴田は。
すぐにいぶかしむ顔になりだ。彼に問い返した。
「それは何故でしょうか」
「御主は東に向かってくれ」
「東にですか」
「美濃の東の国人達もこちらについてきておる」
そのだ。美濃の東のだというのだ。
「美濃の東にはあの家が控えておるな」
「武田ですか」
「そうじゃ、武田じゃ」
戦国随一と言われ巨大な勢力になっているその武田であった。美濃と接している信濃を有しているのだ。だからだとだ。信長は言うのだ。
「あれへの備えにじゃ」
「わしが東に出てですか」
「墨俣の城ができる間少し見ておいて欲しい」
睨みを効かせる意味もあった。ここは。
「だからじゃ」
「わかりました。それでは」
「さすればです」
柴田が頷くとすぐにだ。佐久間が出て来た。
「墨俣にはそれがしが」
「牛助、そなたはじゃ」
「むっ、わしは西ですか」
「そうじゃ。三人衆を見ておいてくれ」
今度は美濃の中のだ。彼等のことだった。
「若しおかしなことをすればじゃ」
「その時にはですな」
「そなたが防げ」
だからだ。彼もだった。
「東と西は赤鬼と青鬼でそれぞれ防ぐ」
「ではその様に」
「我等は」
「さて、ではじゃ」
武の二枚看板に告げてからだ。まただった。
信長は問うた。他の彼等に。
「誰がある」
「ふむ。それでは」
三人目は彼だった。丹羽である。
織田家において最もあらゆることができる彼が出てだ。やや控え目に言うのだった。
「それがしが」
「五郎左か」
「はい、僭越ですがそれがしが」
「ふう
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