第二十二話 広瀬の礼儀その四
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「で、ちょっといいかな」
「はい、何でしょうか」
「今俺と一緒にいるけれどさ」
食べながらだが話を変えてきたのだった。
「それやっぱりあれだよな」
「お気付きですか」
「気付くさ。剣士の戦いのことだよな」
「はい、実は」
「俺の他の剣士とも会ったんだな」
「そうです。実は」
「だとすると」
その相手が誰なのかをだ。中田は推理してみせた。頭の中でそうしてだ。
それからだ。こう聡美に答えたのだった。
「あの先生かい?」
「おわかりなのですか」
「だってな。工藤さんや高橋さんだとな」
自衛官や警官である彼等のことをだ。まず話す中田だった。
「あんたが話すことはないだろ」
「はい、御二人は戦いを止めようとされていますので」
「だよな。俺もな」
そしてそれは中田もだというのだ。
「話すことはないよ」
「そうですね。特に」
「隠してることもないしな。だからな」
「お二人ではないことはですね」
「わかったさ。それでな」
工藤と高橋の可能性をここで消してだ。さらにだった。
「上城君ともな」
「むしろ彼の方が悩んでいますから」
「だからむしろあんたが話を聞く方だよな」
「そうなります」
「で、残るは二人」
消去法で消していってだ。今わかっている剣士の中から言ったのだった。
「とはいってもな」
「広瀬さんは」
「近寄りにくい奴だしな」
「お話はできると思いますが」
「それでもな」
「はい、あまり感情を出されない方ですから」
それでだとだ。聡美は食べながらも俯いた顔で述べる。
「こうした感じでお話することは」
「できないよな」
「しかもあいつの考えはもうわかってるしな」
「何としてもです」
戦い己の目的を果たそうとしている。つまり彼には翻意を促してももう無理なことはわかっている。つまり少なくとも今の時点で何を言ってもなのだ。
それでだ。聡美も言うのだった。
「ですからあの人とは」
「最初からな」
「話そうとは考えていませんでした」
「で、最後に一人だよ」
「高代さんが」
「あの先生な。確かに話のわかる人でな」
「とても礼儀正しくて穏やかな方です」
聡美は中田に高代のことも話した。
「ですから」
「話しやすいよな。しかもまだ翻意の余地はあると」
「そう思ったのですが」
「けれど駄目だったんだな」
「あの方も揺るがないです」
戦いをする、そしてそこには翻意しようというものは見られなかったというのだ。
それでだ。聡美は今言うのだった。
「残念なことに」
「そうだよな。どうしてもだよな」
「私はどうすればいいのでしょうか」
「俺も戦いについてはな」
中田は自分のことも話した。
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