第二十一話 聡美と高代その十三
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「私もです」
「御考えをですか」
「はい、変えません」
何があってもそうするというのだった。
「私もそうします」
「左様ですか」
「そうしますので」
「では。この時代のこの国でもですね」
声もだ。その声の色の悲しみの色を含ませてだった。
その色の声でだ。聡美に告げたのだった。
「私達はまた」
「私も。どうしても」
「そうですね。私達は憎み合うことはないというのに」
「私は貴女を憎んではいません」
そのことは否定した。聡美自身もだ。
ではそこにあるものは何か。聡美は言ったのだった。
「むしろ。他の誰よりもです」
「私を愛して下さっているのですね」
「お姉様と同じです」
声の主を姉と呼んで。そうしての言葉だった。
「お姉様も私を愛して下さっていますね」
「妹として。そして」
そしてなのだった。さらにだった。
「友として」
「私もです。私達は共にです」
「もう一人の自分自身だからこそ」
「愛しています」
聡美は声に告げた。己の彼女への愛情を。
そしてお互いにそのことを確かめ合いながらだ。それでもだった。
聡美はだ。声に告げたのだった。
「止めます。必ず」
「私は行わせます」
二人の道は違っていた。愛し合っていても。
だがそれでもだった。二人はだ。
相容れないものを感じ合いだ。そしてなのだった。
今は別れてだ。聡美はだ。
声に対して背を向ける様にしてだ。足を踏み出してだ。
何処かへと向かおうとする。そしてだ。
最後にだ。こう声に言ったのだった。
「では。何時の日か」
「何時かはですね」
「また。共にいたいです」
「私もです」
「それなのに。どうして」
声が泣いていた。そうなっていた。
「私達は」
「全ては私のせいです」
声は謝りもした。
「そのことはです」
「ですがそれでも」
「私はもう決めたのですから」
だからだとだ。やはり声の決意は変わっていなかった。
そしてその決意故にだった。聡美の背に言ったのだった。
「どうしてもです」
「ですね。私も私で」
「決めたのだからこそ」
「道は。一つではないのですね」
聡美の気付いたことだった。これは。
そしてその気付いたことも言ってなのだった。
聡美はその場を去った。そしてだ。
彼女だけになった声はだ。寂しく言ったのだった。
「月は一つなのに心は二つ」
言うのはこのことだった。
「そしてその二つの心は。一つにはならないのですね」
これが声の言葉だった。そしてだ。
声も気配を消した。その悲しみを感じたままだ。そうなったのである。
第二十一話 完
2012・1・15
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