第五十八話 墨俣での合戦その七
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動きはかなり悪い。柴田はそれを見て言ったのである。
「ならばじゃ」
「挟み撃ちにしてそうしてですか」
「一気に」
「そうじゃ。崩す」
まさにそうするというのだ。
「敵は間違いなく右の軍に向かうがじゃ」
「その動きが遅い為ですか」
「左からも攻めて」
「そうして攻める。さてその攻め方じゃが」
そうしたことまで話したうえでだ。柴田はその先陣をまずは左右に分けたのだった。そのうえで自身は右翼を率いてだ。敵から見て左側に回り込んだのだった。
それを見てだ。斉藤の軍の将達はすぐに言い合った。
「そのまま我等の横を衝くつもりか」
「ふん、数は我等の方が多いのにそう来るか」
「愚かな奴等よ」
「さて、殿はおられぬが」
主の龍興は出てはいない。彼は稲葉山で今も酒と女に溺れている。
その彼についてはだ。斉藤の家臣達もだ。
少しだ。項垂れて言うのであった。
「殿にも困ったことよ」
「織田はあのうつけが自ら来ておるのにな」
「我等の殿はどうして」
「ああも酒に女なのじゃ」
「酒に女もよいが」
こうだ。彼等は話していく。
「戦のことも見てもらいたいものじゃ」
「それに政もな」
「国人達も家臣達も次第に離反してきておる」
「これでは斉藤も危ういぞ」
「全くじゃ」
こう話してだ。斉藤の危惧を感じているのだった。
見れば彼等の顔は浮かない。そしてだ。
その彼等が率いる兵達もだ。具足の手入れは悪くだ。
刀も槍も今一つ手入れがよくない。弓もだ。
そしてだ。彼等の動きもだ。
柴田は自軍と比べて緩慢な彼等の動きを見てだ。こう共にいる佐々に述べた。
「思った以上じゃ」
「相手の動きが悪いと」
「うむ、碌に訓練をしておらん」
その動きを見て言うのである。
「それにじゃ」
「率いている者もですな」
「やる気もないしそれに資質もない」
どちらも欠けている者達だというのだ。
「その連中をじゃ。今から攻めるぞ」
「わかりました、それでは」
「全軍このまま前に出よ」
柴田は全軍に厳かに告げる。
それを受けてだ。織田軍は。
実際に前に出る。そして間合いを見計らい。
柴田がだ。また言った。
「よし、弓を放て!」
「はっ!」
「わかりました!」
すぐに応える声が挙がり。そうしてだった。
足軽達が一斉に弓を放つ。
弓が思いきり引かれそのうえでだ。斜め上に飛ばすのだった。
見れば織田の弓は大きい。その弓を思いきり放ったのだ。それも何度も。
織田の矢は斉藤の弓矢よりも遠くに飛びだ。そうして。
斉藤の者達を射抜いていく。射抜かれた者達が次々と倒れていく。
「な、まだこちらは何もしていないぞ!」
「それなのにか!」
「ここまで飛んで来るというのか」
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