第二十一話 聡美と高代その十二
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そのうえでだ。聡美に対して言ったのである。
「あの方が。もう一度目覚めるのです」
「そしてですか」
「私達は永遠に共にいられるのですから」
「お姉様」
このうえなく悲しい声でだ。聡美は声の主に言った。
「貴女は。何故そこまで」
「貴女ならわかる筈です。私の気持ちが」
「わかります」
それはだと。聡美は答えられた。
だがそれでもだ。顔を横に振った。それと共に銀色の髪が動く。
髪をそうさせながらだ。彼女は声に言うのだった。
「ですがそれでもです」
「私を止めたいのですか」
「もう彼等を犠牲にしないで下さい」
顔をあげてだ。声の主に訴えたのである。
「神話の頃から彼等を戦いの中に縛り命を供物にするのは」
「彼等は罪人だったではないですか」
声もだ。聡美の悲しみを振り切る様にして言う。
「それではです」
「犠牲にしてもいいと」
「そうではないですか」
こうだ。自己弁護そのもので聡美に返したのである。
「違いますか。彼等は」
「罪は。一度死ねば清められます」
しかしだ。また言う聡美だった。
「それでもお姉様は彼等を」
「命、人の命も積み重ねられればです」
「神の命になるからですか」
「そうです。そしてそれはです」
神話の頃から続けられた、それがだというのだ。
「間も無く果たせるのですから」
「止められませんか」
「私の考えは変わりません」
完全なだ。否定の言葉だった。
「例え誰に言われようとも」
「そうですか」
「わかっていると思いますが」
声が聡美に尋ねてきた。
「私のこのことは」
「はい、あの頃から」
「私達はずっと一緒でしたね」
今度はこんなことを言ってきた声だった。
「そうでしたね」
「そうです。私が司る様になってきた」
「私と共にあの夜空を照らすものをそうするようになってからでしたね」
「一緒でした。ですから」
「私のことはわかってくれていますね」
「自負があります」
こう言うがだ。しかしだった。
その自負は悲しさを含んだものでだ。こう言ったのだった。
「そのことは」
「そうですね。貴女は私を最もわかってくれています」
「そして貴女も私を」
「ならばです」
「はい、貴女は最後まで」
「果たします」
決意を以てだ。声は答えた。
「必ずや」
「そうですか」
「ではです」
それではだとだ。また言う声だった。
今度の言葉は切るものだった。その切る言葉でだ。
聡美に告げてだ。そしてなのだった。
「また。お話することになりますね」
「そうですね。また」
「ですが私の決意は変わりません」
「貴女が変わらないのなら」
聡美はだ。声の主にだ。今度は自分から言った。
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