第二十一話 聡美と高代その五
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「マカロニグラタン、スパゲティはペスカトーレと」
「そしてですね」
「トマトとほうれん草のものをお願いします」
彼女はこの四つを頼んだのだった。そしてだ。
そのうえでだ。これも頼んだのだった。
「ワインは赤を」
「銘柄は何を」
「ネミオス=イノスをお願いします」
それをだというのだ。
「あるでしょうか」
「確かそれは」
「はい、ギリシアのワインです」
聡美の国のだ。それをだというのだ。
「あればそれをお願いします」
「あります」
まずはこう答える店員だった。笑顔で。
そしてそのうえでだ。聡美にこう言うのだった。
「ですがお客様、あのワインを頼まれるとは」
「そうした方は少ないのですか」
「はい」
その通りだとだ。店員の女の子は答える。
「多くの方はイタリアやスペインのワインを頼まれますので」
「フランスワインはないのですか」
「当店には置いていません」
それは何故かとも話す店員だった。
「イタリア料理の店ですので」
「だからですか」
「日本のワインはあります」
無意識のうちに高代が今持っているワインを見た。その赤ワインをだ。
「ですがフランスワインはあえて置いていません」
「そうなのですか」
「シェフのこだわりでして」
「イタリア料理にはですか」
「フランスワインは合わないとのことなので」
これがこだわりだというのだ。この店のシェフのだ。
「当店の姉妹店のフレンチレストランには置いてあります」
「左様ですか」
「はい、そうなっています」
こう話すのだった。
「そちらではイタリアワインは置いていません」
「そこがこだわりですか」
「そしてそれで、ですね」
「私のワインはです」
「そのネミオス=イノスを」
「畏まりました」
「デザートは後で」
聡美もそれは後にしてだ。そのうえでだった。
彼女もまたそのパスタを食べる。そうしながら高代と話をはじめた。
高代はイカ墨の黒いパスタを食べ甲州ワインを飲みつつだ。そのうえでだ。
あらためてだ。彼女にこう言うのだった。
「しかし何故私にこうして」
「御名前を聞いていましたので」
「私のですか」
「はい、上城君のことは」
「彼はいい生徒ですよ」
微笑んでだ。上城についてこう言う彼だった。
そしてそのうえでだ。聡美にこうも言ってきたのだった。
「ただ。剣士としてはまだ迷いがありますね」
「えっ、何故それを」
「貴女が私のところに来たのは」
聡美を見てだ。そうして言う高代だった。
「それ故にですね」
「まさか。私が」
「剣士のことを御存知ですね」
目は温厚だ。しかしだ。
その目も言葉も完全にだ。聡美に向けてだ。
そのうえでだ。彼は聡美に対して言うのだった。
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