暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第二十一話 聡美と高代その五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「マカロニグラタン、スパゲティはペスカトーレと」
「そしてですね」
「トマトとほうれん草のものをお願いします」
 彼女はこの四つを頼んだのだった。そしてだ。
 そのうえでだ。これも頼んだのだった。
「ワインは赤を」
「銘柄は何を」
「ネミオス=イノスをお願いします」
 それをだというのだ。
「あるでしょうか」
「確かそれは」
「はい、ギリシアのワインです」
 聡美の国のだ。それをだというのだ。
「あればそれをお願いします」
「あります」
 まずはこう答える店員だった。笑顔で。
 そしてそのうえでだ。聡美にこう言うのだった。
「ですがお客様、あのワインを頼まれるとは」
「そうした方は少ないのですか」
「はい」
 その通りだとだ。店員の女の子は答える。
「多くの方はイタリアやスペインのワインを頼まれますので」
「フランスワインはないのですか」
「当店には置いていません」
 それは何故かとも話す店員だった。
「イタリア料理の店ですので」
「だからですか」
「日本のワインはあります」
 無意識のうちに高代が今持っているワインを見た。その赤ワインをだ。
「ですがフランスワインはあえて置いていません」
「そうなのですか」
「シェフのこだわりでして」
「イタリア料理にはですか」
「フランスワインは合わないとのことなので」
 これがこだわりだというのだ。この店のシェフのだ。
「当店の姉妹店のフレンチレストランには置いてあります」
「左様ですか」
「はい、そうなっています」
 こう話すのだった。
「そちらではイタリアワインは置いていません」
「そこがこだわりですか」
「そしてそれで、ですね」
「私のワインはです」
「そのネミオス=イノスを」
「畏まりました」
「デザートは後で」
 聡美もそれは後にしてだ。そのうえでだった。
 彼女もまたそのパスタを食べる。そうしながら高代と話をはじめた。
 高代はイカ墨の黒いパスタを食べ甲州ワインを飲みつつだ。そのうえでだ。
 あらためてだ。彼女にこう言うのだった。
「しかし何故私にこうして」
「御名前を聞いていましたので」
「私のですか」
「はい、上城君のことは」
「彼はいい生徒ですよ」
 微笑んでだ。上城についてこう言う彼だった。
 そしてそのうえでだ。聡美にこうも言ってきたのだった。
「ただ。剣士としてはまだ迷いがありますね」
「えっ、何故それを」
「貴女が私のところに来たのは」
 聡美を見てだ。そうして言う高代だった。
「それ故にですね」
「まさか。私が」
「剣士のことを御存知ですね」
 目は温厚だ。しかしだ。
 その目も言葉も完全にだ。聡美に向けてだ。
 そのうえでだ。彼は聡美に対して言うのだった。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ