第二十話 ハヤシライスその十二
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「結婚と出産があったんだぞ」
「高校卒業と同時にって」
「それで今も仲良く一緒に夫婦をやっているからな」
「何か凄いんだけれど」
「だが実際にある話だぞ」
「じゃあ私達も」
「夢物語じゃないからな」
結婚や子供の話は現実の話だというのだ。
「このことはわかっておく様にだ」
「ううん、十七とか十八でって」
「まあ姉ちゃんは変に真面目だからね」
ここでだ。弟が参戦してきた。
「そういうことはないだろうけれど」
「変にってどういう意味よ」
「だから言ったままだよ」
「言ったまま?」
「そう、姉ちゃんって変に真面目なんだよ」
またこう姉に対して言う彼だった。ハヤシライスのお代わりを自分で入れながら。
「それでさ。こうしたことだってさ」
「どうだっていうのよ」
「キスとかもまだでしょ」
かなりダイレクトにだ。姉に言ったのだった。
「そういったこともさ」
「ば、馬鹿言わないでよ」
キスという単語にだ。樹里はだ。
顔を瞬時に真っ赤にさせてだ。こう弟に言い返した。
「そんな。キスだなんて」
「してないんだね」
「だから。何よそれ」
顔どころか耳まで真っ赤だった。そのうえでの言葉である。
「破廉恥とかは言わないけれど」
「今時そんな言葉誰も使わないよ」
「だから。言わないから」
「それでもキスはなんだね」
「それはまあ。何ていうか」
ここでだ。何とかはぐらかそうとする姉だった。
「その、つまりはね」
「言わなくてもいいから。とにかくそういうことはだよね」
「今はね」
キス、そしてそれから先のことはだというのだ。
「まだまだ先の話よ」
「やれやれだね。これは高校卒業と同時になんてのはね」
「それはないな」
父も断言する。樹里に関してはだとだ。
「まあ上城君は暫く我慢してくれ」
「いえ、僕はその」
「何なら多少強引にいってもいいからな」
「強引にって」
「いいかね、これは男の問題なんだ」
いささか以上に強くだ。父は上城に言ってきた。
「男というものはだよ」
「強くですか」
「いざという時はね」
そうしろというのだ。
「当たって砕けろだよ。いや」
「いや?」
「ここで砕けても駄目なんだよ」
当たってもだ。それでもだというのだ。
そしてだ。彼は今度は歴史から話すのだった。
「この当たって砕けろという言葉はね」
「時々聞く言葉ですよね」
「これは日系アメリカ人の部隊の言葉なんだよ」
「確かあの部隊って」
「そう、四四二部隊だよ」
「あのアメリカで一番勲章を貰ったっていう」
「そして一番被害の多かった部隊なんだ」
第二次世界大戦において強制収容所に隔離されたうえで名誉回復の為に戦場に赴いてだ。それだけの犠牲者を出したのだ。
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