第五十六話 竹中の意地その九
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「御主等はわしの側におれ」
「そのうえで殿を御護りせよと」
「そう仰るのですね」
「頼むぞ」
こうも言ってだ。信長は微笑んでみせた。
「御主等が左右におれば憂いはない」
「では。何があろうともです」
「殿を御護りします」
池田と森もだ。主の言葉に応えて頷く。
そして他の者達が信長が直接率いる本陣に入りだ。陣はあらかた決まったのだった。
それを全て決めてからだ。信長は言った。
「この戦は稲葉山の城を攻め取るのが目的ではない」
「あくまで墨俣を手に入れる」
「その為の戦ですな」
「そうじゃ。あの城を攻め取るのはそれからじゃ」
墨俣を手に入れてからだというのだ。
「わかっておるな」
「はい、それは」
「わかっております」
「墨俣を手に入れればそこに砦を築く」
このこともだ。信長は既に頭に入れていた。ただその地を攻め取るだけでは何にもならないことはよくわかっているからだ。
「よいな」
「ではある程度の陣をあの地に置きますか」
今言ったのは佐久間である。
「そのうえで主力は尾張に引き上げて、ですな」
「そうじゃな。退く際の殿軍は御主じゃ」
信長はここでも殿軍は佐久間に命じた。
「攻めるは権六で退くは牛助じゃからな」
「有り難き御言葉、それでは」
「まあ砦を築くのも難しい」
そのだ。墨俣に砦を築くことはだ。
「砦の為の木は既にあるな」
「御安心下さい」
平手が応える。
「もう整っております」
「ならばよい。しかし爺」
「何でございましょうか」
「今回は御主も出陣せよ」
留守役が多い彼もだ。今回は出陣せよというのだ。
「よいな。そうせよ」
「では」
「まあ爺の小言もたまには聞かぬと張り合いがない」
こう言うところはやはり信長だった。笑いながら話す。
「今回は聞くとしようぞ」
「そう仰るから駄目なのです」
そしてだ。平手もやはり平手だった。すぐにだ。
信長を見据えてだ。こう小言をはじめたのだった。
「よいですか、戦は少しでも気を抜けば」
「わかっておる。敗れるというのじゃな」
「相手を舐めればそれで終わりです」
こうも言うのだった。
「その隙を衝かれです」
「そうじゃな。わしにそうさせるのが爺じゃ」
小言もだ。必要だというのだ。
「だから来るのじゃ」
「なら容赦は致しませぬぞ」
「逆に手加減する爺もそれはそれで怖いがのう」
平手には笑って返しだった。平手の代わりの留守役のことも述べた。それは。
「勘十郎、任せたぞ」
「では」
信行は兄の言葉にすぐに応えた。
「果たさせてもらいます」
「是非な」
「それで兄上」
留守を告げられてからだ。信行は兄に尋ねた。
「一つ御聞きしたいことがありますが」
「何じゃ、一
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