第五十六話 竹中の意地その七
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小舟の中でだ。竹中兄弟と共に城を占拠した者達はだ。彦作に問うのだった。
「何故小舟でしょうか」
「川を下りられて尾張に向かうのは」
「それは何故」
「馬よりも早いからじゃ」
それでだとだ。彦作は彼等に答える。小舟は一路南に向かっている。
川は速くその上にいる彼等の乗る舟も速い。その舟の上でだ。
彦作はだ。こう彼等に話したのだった。
「舟はな」
「ううむ。そういえばのう」
「尾張に行くには馬で進むよりな」
「川を使った方が速い様じゃな」
「どうやら」
「兄上が仰っていた」
彦作は兄のことをその話に出した。
「美濃から尾張、尾張から美濃に行くにはじゃ」
「川を使った方が速い」
「それを御存知でしたか」
「そうじゃ。それに馬で向かうとじゃ」
この場合は舟に比べて遅いそれについてさらに話す彼だった。
「何時追っ手にやられるかわからんぞ」
「そうですな。川ですと舟にだけ気をつければいいですが」
周りにはその舟すらない。彼等の舟が一艘だけでだ。南に下っている。今は彼等の周りは至って平穏で静かなものである。
「しかし馬では後ろから追っ手が来ますし」
「下手をすれば夜に忍の者も来ますな」
「うかうかしてられませぬ」
「川の上の方が安全じゃ」
これも川を使う大きな理由だった。
「それでじゃ」
「ううむ、動くには馬とは限らない」
「そういうことですか」
「しかも安く済む」
理由はまだあった。このことがあった。
「舟は一艘で済む」
「しかし馬は人数分いる」
「そういうことですか」
「そうじゃ。だから舟はよい」
ひいてはだ。川を使うことはだ。
「近頃尾張では川のほとりの港も栄えていると聞くが」
「商人もですか」
「いるからですか」
「川も使い様じゃ」
彦作は。舟の上に座り腕を袖の下で組みだ。
そのうえでだ。こうも述べるのだった。
「速く動こうと思えばこうして使えばじゃ」
「馬よりも速く動ける」
「そういうことですか」
「うむ。ではな」
ここまで話してだ。彦作はだ。
追っ手に襲われることなく尾張に入りだ。そうして。
清洲まで行き信長に仕官したのだった。するとだ。
その話はすぐに進みだ。彼等は。
信長の前に呼ばれだ。他ならぬ信長にこう告げられたのだった。
「そなた等を用いる」
「そうして頂けるのですか」
「何故ここに来たのかはもう聞いておる」
信長は笑いながらだ。このことを言うのだった。
「そうか、川か」
「舟に乗りここまで来ました」
「速いのう、それもかなり
「左様です。移動は馬だけではないので」
「舟もじゃな」
「左様です」
「舟については尾張も昔からよく使っておる」
尾張は川が多い。だからこれも当然のことである。
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