第二十話 ハヤシライスその八
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「ヘビーローテーションね」
「私もAKBだけれど」
「会いたかっただったっけ」
「スカートひらりに変えたの」
「あれっ、それにしたんだ」
「あの曲も好きだから」
それでだ。それにしたというのだ。
「だからね。それでなの」
「成程ね、あの曲もいいよね」
「そう思うでしょ。だからなのよ」
「僕も今度あの曲にしようかな」
「AKBっていい曲が多いからね」
「それに明るい曲多いから」
樹里は実は女性アイドル好きなのだ。同性でもいいアイドルはいいものだ。だから彼女はAKBの曲を着信音にしているのだ。それで今笑顔で話すのだった。
「それでね」
「うん、それでよね」
「お母さんからの返信だったんだけれど」
「おばさん何て言ってるの?」
「いいってさ」
そこで食べてもだ。いいと返信が来たというのだ。
「これでいいよね」
「ええ、それじゃあね」
「ハヤシライス御馳走になるよ」
「どうぞ」
こうしてだ。紅茶に終わらずにだ。
上城はキッチンに樹里と共に行きだ。そこでだ。
そのハヤシライスを食べる。樹里の父と弟も一緒だ。そして四人でだ。
それぞれテーブルに着き食べる。白い大きな皿にあるその赤茶色の美味しそうな匂いの、牛肉と玉葱が御飯を覆っているそのハヤシライスを銀色のスプーンに取りだ。
そして食べる。それから言う言葉は。
「美味しいですね」
「おっ、そう言ってくれるか」
「はい、本当に」
こうだ。彼は眼鏡で七割程白くなった髪を七三分けにした初老の痩せた男性にだ。笑顔で答えたのである。
「美味しいです」
「それは何よりだよ。実はね」
「実は?」
「このハヤシライスは昨日から仕込んだものなんだよ」
樹里が言ったことがそのまま出た。
「それで肉だってね」
「このお肉もですか」
「まあオーストラリアのだけれどね」
それをだ。どうしたかというのだ。
「ハヤシライスに使う玉葱と一緒に置いておいて」
「あっ、それでなんですか」
「柔らかくしたんだよ」
「そうだったんですか」
「シャリアピンステーキってあるよね」
樹里の父は陽気な感じで上城に話す。
「あれからヒントを得たんだよ」
「お肉に玉葱ですか」
「そう、この組み合わせはいいんだよ」
そうだというのだ。
「肉は柔らかくなるし。それに」
「それに?」
「味もよくなるんだよ」
「そうなんですか」
「そう、肉に玉葱の組み合わせはいいんだよ」
その薀蓄を話すのだった。
「それもかなりね」
「成程、僕お料理はしませんから」
「料理はするべきだよ」
完全にだ。男の料理人の言葉だった。
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