第五十六話 竹中の意地その六
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「隠居するそうじゃ」
「ではすぐに追っ手を」
「追っ手を差し向けますか」
「当然じゃ。捕まえて首を刎ねてやる」
そうすると言ってであった。次には。
竹中の弟である彦作達についてもだ。こう言うのだった。
「あ奴に従った者達もじゃ」
「そしてですな」
「一人残らず成敗する」
「そうされると」
「そうじゃ。一刻も早く追っ手を差し向けよ」
そうしろとだ。実際に命じた。
「ではな」
「わかりました。それでは」
「今すぐに」
残念ながらだ。竹中の予想通りになった。やはり龍興は彼の言葉を聞き入れなかった。それどころかだ。追っ手を差し向けたのだった。
だがその竹中はだ。今はだ。
美濃におらずだ。ある場所に潜んでいた。
その場においてだ。彼が絶対の信頼を置く側の者達の話を聞いていた。
「そうか。追っ手をか」
「はい、半兵衛様にもです」
「送ってきたか」
「ではすぐにここからも」
「いや、よい」
それには及ばないというのだ。彼は冷静そのものの口調でその側の者に話した。
「ここにいればよい」
「ですが」
「おそらく。龍興様の追っ手がここを見つける前に」
その前にだというのだ。
「ことは終わる」
「だからですか」
「うむ、ここにいてよい」
そうだというのである。これが竹中の考えだった。
「それに彦作達じゃが」
「既に尾張に向かっておられます」
「では何の心配もない。追っ手が追いつく前にじゃ」
その前にだというのだ。
「尾張に辿り着いておる」
「彦作様達についても何の心配もいりませぬか」
「いらぬ。それよりもだ」
むしろだった。今の竹中はだ。
残念そうな顔をしてだ。こう言ったのだった。
「殿はやはりわかってくれなかったか」
「殿ですか」
「そうじゃ。それがのう」
その顔で言っていく竹中だった。
「残念で仕方ない」
「左様ですか」
「だがそれもまた天命」
竹中の言葉がここでこう変わった。
そしてだ。彼は今度はこんなことを言った。
「殿は殿で。美濃を出られても」
「そうしてもですか」
「生きて頂きたい」
例え美濃から出ることになり己の主でなくなろうともだ。そうして欲しいというのだ。
「是非な。だが織田殿に歯向かおうとされるなら」
「その場合は」
「殿にとってよい結果とならぬだろう」
そうなるともいうのだ。
「これもやはり。殿にとっては我慢できぬことであり」
「難しいですか」
「うむ、難しい」
「あの殿はそれでは」
「出家される様な方でもない」
「さすれば。織田殿に怨みを抱かれ」
「よからぬことをされよからぬ終わりになるだろう」
こう言ってであった。竹中は。
その隠れ家において隠棲するのだった。そのうえで美濃がどう
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