第二十話 ハヤシライスその五
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「しかしです。その迷いからはです」
「絶対にですか」
「最後は克服しなければなりません」
「最後にはですか」
「そのままにしておいてはいけないのです」
迷ったままではだ、駄目だというのだ。
「そのことをお話させてもらいます。では」
「はい、それでは」
「また」
こうしてだった。上城と樹里はだ。
高代と別れだ。そしてだった。
二人でクラスに戻る。その途中でだ。
樹里は上城に顔を向けて言うのだった。
「ええと。先生はやっぱり」
「先生だよね」
「優しくて礼儀正しくて温厚で」
「いい先生だよね」
「それでも剣士なのね」
その彼がだ。戦うということにだった。
樹里は違和感を覚えてだ。そして言うのだった。
「先生もまた」
「うん、今は僕と戦わないけれど」
「何時かは」
「戦うかも知れないのね」
「その時はどうしようか」
こう考えだ。今も迷う彼だった。彼の迷いは消えなかった。
その迷いを抱いてだ。部活に行き稽古をする。しかしだ。
その中でだ。ふと顧問の先生に言われたのだった。
「おい、ちょっと待て」
「はい、何か」
「どうしたんだ、今日は」
防具を着けてかかり稽古をしている彼を呼び止めてだ。そして言ってきたのだ。
「動きが悪いぞ」
「動きがですか」
「そうだ。調子が悪い、いや」
先生も考える顔で彼に述べる。先生も防具を着けている。面だけを着けていない。
その何時でも稽古にかかれる姿でだ。上城に言うのだ。
「迷いがあるのか?」
「迷いですか」
「迷いには注意しろ」
先生は警告する顔だった。
「それは怪我の元だからな」
「それで動きが悪くなるからですか」
「注意力も落ちる」
それも理由にあるというのだ。
「だから危ないんだ」
「それでなんですか」
「そうだ、その注意力も散漫になるしな」
「だから余計に」
「迷いには注意しろ」
またこう告げる先生だった。
「わかったな。注意一秒でだ」
「怪我は一生ですね」
「怪我をしてからじゃ遅いんだ」
「怪我、ですか」
「そうなってから気付いたら本当に遅い。だからいいな」
「わかりました」
「稽古に集中しろ」
部活の顧問としての確かな言葉だった。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「いつも迷っていても答えは出ない」
こうも言う先生だった。
「気分転換もしてこそだ」
「答えは出るんですね」
「その気分転換も集中して思いきりしろ」
やるからにはだというのだ。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
こうしてだった。彼はだ。
部活に専念して一旦頭をすっきりさせた。
それからだ。部活の帰りに樹里にこのことを話したのだった。
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