第二十話 ハヤシライスその二
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「降りて欲しくないから」
「戦いを止める為に」
「けれどそれ以上に」
愛反する、そして最も強い願いが出た。
「絶対にね。死なないでね」
「そうだね。死んだらね」
「何にもならないから」
だからだとだ。強い声で上城に告げたのである。
「だからそれだけは」
「じゃあ若しもの時は」
「私こう考えてるの」
「命があればだね」
「戦いから。そうした戦いから逃げてもね」
「いいんだね」
「逃げるって言うと何か卑怯に聞こえるけれど」
それでもだというのだ。樹里の今の上城への言葉は切実なものだった。
「それでもね」
「死ぬよりはなんだね」
「そう、ずっといいから」
「だから僕は」
「そう、生きてね」
目もだ。切実なものになって上城に告げていた。
「例え何があってもね」
「うん、それじゃあ」
「生きてこそだし。ただ先生は」
「一度先生と話してみる?」
上城はここでだ。樹里に提案した。
その提案を聞いてだ。樹里はというと。
一旦考える顔になりだ。間を置いた。それからだった。
上城に対してその考える顔でだ。こう答えたのである。
「そうね」
「お話してみるんだね」
「いいかも。けれどね」
「けれど?」
「一緒にお話しましょう」
これがだ。樹里の出した条件だった。
「先生とね。三人でね」
「お話するんだ」
「私も剣士の戦いのことを知ってるから」
「剣士でなくても」
「それで」
だからだというのだ。
「いいかしら」
「そうだね。高代先生だと」
「おかしなことする様な人じゃないわよね。剣士になっても」
「うん、いつも通りの先生だよ」
温厚で礼儀正しいだ。彼等が知っている高代のままだというのだ。
「本当にね」
「そうよね。じゃあ」
「行こうか」
「ええ」
こうしてだ。樹里は上城とだ。二人でだ。
その高代の前に向かう。そこは英語科の職員室だった。八条学園はそれぞれの科目の教師たちの職員室があるのだ。それでそこに向かったのだ。
そこに行くとだ。高代は自分の席で教科書を開いていた。教師も教師で学ばなければならない。だから彼は教科書を開いて学んでいたのだ。その彼の席のところに来てだ。
二人はだ。こう話を切り出したのだった。
「あの」
「上城君、それにですか」
「私もです」
「あのことですね」
話を聞いてだ。すぐにだった。
高代は事情を察してだ。二人に言ったのである。
「ではです。場所を変えますか」
「それは何処ですか?」
「屋上はどうでしょうか」
上城だけでなく樹里に対しても述べた言葉だった。
「この校舎の屋上で」
「わかりました。それじゃあ」
「今から屋上で」
二人も彼の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
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