第十九話 高代の力その十三
[8]前話 [2]次話
「俺もあの娘と一緒になれる」
「普通ではないのですか」
「人と人の縁は色々だ」
ふとだ。広瀬の顔に陰がさした。
そしてその陰をそのままにしてだ。彼は声に対して話す。
「結ばれたくとも。お互いにそう思っていても」
「それができないこともですね」
「ある。君もそれはわかるだろう」
「そうしたことも見てきました」
声は広瀬に答えたがその答えはこうしたものだった。
「私も。色々とありましたから」
「それでだな」
「はい、確かに人と人が結ばれることはです」
「簡単な時もあれば」
「困難である場合もありますね」
「今の俺は困難だ」
そうした状況にあるというのだ。それでだというのだ。
「だからこそ。生き残り」
「そのうえで、ですね」
「俺はあの娘と共に生きる」
最後の一人まで生き残りそうするというのだ。
「それが俺の夢だ」
「わかりました。それでは」
「これ以上は聞かないのかな」
声が聞こえると思える方にだ。無意識のうちにだ。
目を向けてだ。そのうえで声に問うたのだった。
「君は今はこれで終わりでいいのかな」
「はい、私はこれで」
実際にだ。こう返す声だった。
「いいです」
「そうなのか」
「もうわかりましたから」
だからだ。いいというのだ。
「ある程度は」
「ある程度でいいのか」
「後にわかるでしょうし」
それもだ。あるというのだ。
「ですから」
「そうか。だからか」
「ではまた御会いしましょう」
声から別れの言葉を告げてきた。
「その時にまた何かあれば」
「そうだな。俺も君のことを知りたいしな」
「私は。それは」
「言えないか。それはわかる」
声の秘密主義、それも既に察していた。
「俺もな」
「左様ですか」
「ああ、そうだからな」
「貴方は御自身を隠されるのですね」
「表に出すことは嫌いだ」
実際にそうだというのだ。
「だからな」
「そういうことですね」
「じゃあいいかな」
話を打ち切る言葉だった。
「俺も家に帰りゆっくりとする」
「わかりました。では」
「また話があればな」
「色々と」
こう話をしてだ。そのうえでだった。
彼等は別れた。そうして広瀬は自分の家に帰ったのである。
第十九話 完
2011・12・24
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ