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戦国異伝
第五十五話 美濃の神童その十

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「やはり天下統一は困難じゃ」
「確かに。それは」
「おそらく上洛すれば一気に多くの国が織田殿のものとなる」
「山城だけではなくですか」
 京の都は山城にある。だがそれだけではないというのだ。
 それでだ。さらにだった。
「近畿のほぼ全てが織田殿のものとなるだろうな」
「三好殿は倒されますか」
「そうなるであろう。それで手に入るものは大きい」
 近畿は人も多く土地は肥え街並みもいい。だからだ。
 しかしだ。そうしたものを手に入れてもだというのだ。
「織田殿の前には多くの家が立ちはだかるであろう」
「武田殿や上杉殿ですか」
「他にもある。それに」
「それに?」
「一向宗じゃ」 
 竹中が次に名を挙げたのは彼等だった。
「あの者達がおる」
「朝倉殿や上杉殿を脅かしているあの本願寺ですか」
「本願寺は尋常な相手ではない」
 そうだとだ。ここで弟に話すのだった。
「それこそ下手な大名よりも手強い」
「そうですな。あそこは」
「わかっておるな、それは」
「はい」 
 彦作もだ。真剣な顔で答える。
「それはよく」
「数も多く武具もいい」
 それに加えてだった。本願寺は。
「死しても念仏を唱えておれば極楽に行けると信じておる」
「それがまた、ですな」
「左様、強さの源となっておる」
 まさにだ。そうだというのだ。
「だからこそ厄介なのじゃ」
「若し織田殿とその本願寺が争えば」
「織田殿の苦戦は免れない」
「やはり」
「しかしじゃ」
 それでもだとだ。ここでだった。
 竹中は弟にだ。こうも述べたのだった。
「織田殿は最後には勝たれるだろう」
「勝たれますか」
「そうなる。確かにかなりの被害は出るがじゃ」
 それでもだ。最後にはというのだ。
「織田殿は勝たれる」
「そうなりますか」
「うむ。敵は大名に寺社となろう」
 信長の敵はだ。その二つだった。
「それ位か」
「ではその二つを倒せば織田殿の天下となりますか」
「倒せればな」
「わかりました。ではその時は」
「我等はその織田殿と共に行くぞ」
 その時はだ。彼等はその信長の家臣になっているというのだ。
 そうした話をしあがらだった。彼等は稲葉山城を占拠し龍興の動きを待つのだった。このことは忽ち尾張にも情報として伝わった。
 信長はこの話を家臣達から聞いた。するとだ。
 彼等はだ。すぐに彼にこう言ってきた。
「では殿、今よりですな」
「稲葉山の城に使者を出し」
「そうしてあの城を譲り受ける」
「そうされますか」
「いや、待て」
 しかしだった。ここでだ。
 信長はその彼等にだ。こう返したのだった。
 そしてだ。こう言うのだった。
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