第十九話 高代の力その五
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「そしてな。正々堂々と戦わないさ」
「剣士としてか」
「背中から斬るもんだよ」
そうしたやり方をしてくるというのだ。若し広瀬が自分で言う様な人物ならばだというのだ。
それでだ。中田はさらに述べたのである。
「騙し討ちとかな」
「そうしたやり方でか」
「勝ち残ろうとするからな」
「そうしたやり方は好きじゃない」
また言う広瀬だった。彼の嫌いなものは他にもあったのである。
そしてそのことをだ。中田に述べたのである。
「戦うなら正面から戦う」
「そういうことだよ。だからだよ」
「俺は悪人ではないか」
「無愛想だけれどな」
顔をやや綻ばせてだ。彼の顔を見てだ。
そうしてだ。中田は彼に対して言ったのである。
「まあ下衆でも悪党でもないな」
「そうだといいのだがな」
「今回だってあれだろ」
「正面から闘う」
そうするとだ。広瀬は前を見据えて中田に述べた。
「実際にな」
「じゃあ。その闘いを見せてもらうか」
「好きにしろ」
「じゃあ好きにさせてもらうな」
こうしたやり取りをしてだった。二人はだ。
高等部に来た。するとだ。
門に彼がいた。広瀬はその彼を見てすぐに問うたのである。
「貴方がですか」
「はい、貴方もですね」
「はい、剣士です」
年長者なので敬語を使う広瀬だった。そのうえでだ。
その彼にだ。こう問うたのである。
「第六の剣士の」
「高代陽一です」
「広瀬友則です」
広瀬もだ。高代に応えて名乗る。
「今だけ覚えておいて下さい」
「今だけですか」
「俺が貴方を倒しますので」
だからだというのだ。
「ですから今だけでいいです」
「そうですか。では」
「場所は何処がいいでしょうか」
既に対峙している。そのうえでの言葉だった。
「何処で戦いますか、一体」
「ここでは人目があります」
見れば周囲、グラウンドにも校庭にもだ。部活や下校の生徒達がいる。校舎にもだ。様々な生徒達が見える。その彼等を広瀬と正対したまま見つつだ。高代は言ったのである。
「ですから場所はです」
「変えられますか」
「いい場所を知っています」
微笑みだ。高代はまた言ったのだった。
「そこはどうでしょうか」
「いい場所とは」
「プールです。この学園の」
「プールですか」
「水泳部は今日は部活がないので」
「だからプールはですか」
「空いています」
要するにだ。誰もいないというのだ。
「ですからそこに入りです」
「闘いですか」
「屋上で闘うこともできますが」
「それでもですね」
「プールなら今は誰もいません」
それ故にだというのである。
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