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戦国異伝
第五十五話 美濃の神童その三
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「そういうことじゃ」
「そうじゃな。あの城は確かに堅固じゃ」
 氏家がまた言う。
「普通にやって陥ちるものではない」
「左様じゃ。陥ちるものではない」
 稲葉も氏家に続く。
「だがそれでもじゃ」
「半兵衛がそうするというのならな」
「いいじゃろう」
「そうじゃな」
 二人もだ。最終的には竹中に任せることにした。そしてだ。
 最後の一人である不破もだ。こう言ったのだった。
「とりあえずやってみることじゃな」
「そうして宜しいのですね」
「うむ、やってみることじゃ」
 温かい笑みでだ。竹中に話した。
「御主の考えるままにな」
「では」
「これで陥ちて行動をあらためられなければ」
「もう斉藤は見切ろう」
「そうしようぞ」
「そうなっては最早どうしようもない」
 そこまでの男だからだというのだ。
「して織田殿の動きを見て」
「殿の御目通りなら」
「我等もじゃな」
「決めようぞ」 
 そんな話をしてだった。彼等は。
 竹中に任せることにしてだ。自分達はもう少し様子を見ることにしたのだった。
 竹中は早速だった。まずは城に入ってだ。
 すぐにだ。ある者を呼んだ。
 それは彼によく似た顔立ちだが幾分か色が黒くまた幾分か年少の者だった。その彼がだ。竹中の呼び掛けに応じて出て来てだ。
 そのうえでだ。彼にこう挨拶したのだった。
「兄上、何の御用でしょうか」
「うむ、実はだ」
 その彼にだ。竹中は言った。
「頼みがあるのだ」
「頼みですか」
「彦作よ」
 弟である竹中重矩の名を呼んでの言葉だった。
「そなたとわし、そしてわし等を入れて十六人でだ」
「武芸の稽古でもされますか」
「稽古にはなるな」
 そうした意味もあるという竹中の言葉だった。
 しかしだ。その稽古はというと。
「この城を占領するのだからな」
「!?」
 その言葉を聞いてもだ。彦作はだ。
 まずは眉をいぶかしむものにさせてだ。
 そのうえでだ。こう兄に問い返したのだった。
「兄上、今何と」
「この稲葉山を手中に収める」
 再びだ。竹中は弟に話した。
「そうするのだ」
「まさか。その様な」
「できぬというのか」
「出来る筈がありません」
 こうだ。兄に仰天した顔で答える彦作だった。
「その様なことが」
「普通ではそうだな」
「普通どころか何があろうとも」
「出来ぬ。そうじゃな」
「絶対にです」
「誰もがそう思う」
 竹中の言葉は変わらない。顔もだ。
 真剣そのものの面持ちでだ。弟に告げるのである。
「しかしそう思っているからこそだ」
「されるというのですか」
「龍興様にしても」
 彼に対してもだ。今の主のことを話すのだった。
「どう思うか」
「率直に申し上げて宜しいでしょう
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