第一話 水の少年その四
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「前から強いことは強かったんだよ」
「けれどそれでもなんですね」
「最近になってですか」
「滅茶苦茶強くなったんですか」
「そうだったんですか」
「そう。まあ性格はそのままだけれど」
性格はそのままだというのだ。だが強さは変わったというのだ。
中田は今もだった。一気に前に出てだ。
屈み相手の胴を切り抜いたのだった。
それで一本だった。その一本を見てだ。
上城は唸る様にして言った。
「速いし凄い威力だね」
「切り抜いたって感じだけれど」
「真剣だったら真っ二つだよな」
「そんな勢いだよな、あの銅は」
「普通の剣道じゃないだろ」
「そう思うだろ」
実際にそうだろうとだ。大学の部員も話す。
「今あいつと戦えるのはな」
「いないですか?」
「大学にも」
「いないね」
まさにだ。そうだというのだ。
「あれだけの強さの人間は」
「けれど何か」
どうかとだ。上城が言った。
「餓えてるみたいですね」
「餓えてる?」
「そんな感じがします」
こうその大学生に話すのだった。
「僕の気のせいでしょうか」
「餓えてるね。そういえばそうかな」
「やっぱりそう思いますか?」
「言われてみればね」
彼にしてもそれで気付いたというのである。
「そんな感じだね。今までは素早いだけだったけれどがむしゃらになって」
「そのがむしゃらな闘い方がですか」
「どうしてああなったのか気になるね」
大学生にしてもだ。そうだというのだ。
「俺達にしても」
「そうですか。やっぱり」
「うん。本当に急にああなったんだよ」
強くなったというのだ。獣めいた強さにだ。
「ただ。あれで性格は」
「前と同じですか」
「うん、同じだよ」
そうだというのだ。とにかく性格は変わらないというのだ。
「あれで明るくて飄々とした奴でさ」
「明るいんですか」
「うん、明るくていい奴だよ」
中田のその性格についても話されていく。性格的にはそうした人間だというのだ。ただ変わったのは剣道の強さだというのである。
「ああした闘い方だけれどね」
「防具着けたら性格変わる?」
「そういう人もいるよな」
「ああ、いるいる」
「中には屑になる奴もいるしな」
高校生達はここでこんな話をする。残念なことに剣道をしているからといって人間性までよくなるとは決して言えないのだ。中には、とりわけ学校の教師が剣道をする場合は精神の鍛錬が伴っていない輩が多い。教師にそうした輩が多いのは日教組の問題であろうか。
「世の中色々な奴いるからな」
「屑も多いよな」
「剣道する資格がないようなな」
「そんな奴が」
「ああ、この前そういうの来たよ」
ここで大学生がまた彼等に話す。
「中学生の子供達がここに来たんだよ」
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