第六話 帰蝶その二
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「敗れたというのか」
「それでは。山陽は毛利のものになるのか」
「いよいよ」
「おそらくこれから尼子との戦になるだろうな」
また言う信長だった。
「毛利元就は謀により強くなった者。尼子はそれにどう対するか」
「尼子は武に頼る者が多いですが」
「それで毛利の智に対する」
「これは見物ですな」
「四国でも動きがあったな」
今度は堀に問う信長だった。
「菊千代よ。そちらはどうだ」
「あの姫若子ですが」
堀はまずこの名前を出した。
「初陣で恐るべき働きを見せました」
「姫若子というと」
「あの長宗我部の」
「あの者か」
「はい、長宗我部元親」
まさにその彼だというのである。
「その者です」
「話は聞いていた」
信長は考える顔で堀に返した。
「あの者がのう」
「殿もやはり姫若子だと思っていましたか」
「話を聞く限りではな」
「左様ですか」
「やはり見ねばわからんな」
信長は考える顔のままこうも述べたのであった。
「人にしても何にしてもな」
「全くです」
堀も主のその言葉に頷いた。
「この度心よりそう思いました」
「そしてだ」
信長はさらに言ってきた。
「長宗我部の勢いはどうじゃ」
「はい、まさに破竹の勢いです」
堀は真摯な顔で主に再び述べた。
「おそらくこのままでは土佐は」
「長宗我部のものになるか」
「土佐にはこれといって確かな勢力はありませぬ故」
織田家は、そして信長はこうしたところまで調べさせていたのである。遠く離れた国に対してもその情報収集に抜かりはなかったのである。
「ですから」
「そおうか、土佐は鬼若子のものか」
ここで信長は元親をこう評したのであった。
「鬼若子のにのう」
「鬼若子ですか」
「長宗我部は」
「これまでは姫若子だったな」
信長は元親のその元の呼び名をあえて再び言ってみせた。
「そうじゃな」
「はい、その通りです」
「使いものにならぬと言われていました」
「それが初陣でだったのです」
「だからだ。鬼だ」
また言う信長だった。
「あの者は鬼になったのだ」
「初陣でそれからですか」
「思えば恐ろしいことですな」
「全くです」
「面白い奴のようだな」
こんなことも言う信長だった。
「長宗我部元親、その者の名も覚えておこう」
「やがて無視できない力になるかと」
「わかった。では他にも聞こう」
堀の元親の話から他に移るのであった。
「東北や九州はどうだ」
「九州ですが」
今度は丹羽である。
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