第五十四話 半蔵の選択その二
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「では墨俣じゃ」
「あの地をですか」
「手に入れる」
「そうされますか」
「そうだ、そうする」
その地をだ。絶対に手に入れるというのだ。
「あの地を手に入れれば稲葉山への足掛かりになるからな」
「そのうえであの城を攻める」
「左様ですね」
「うむ、そうだ」
まさにそうだというのだ。
「わかったな。ではだ」
「はい、墨俣への出陣を」
「進めましょう」
まずはその地への出陣をだ。彼等は進めるのだった。
そうした中でだ。三河では。一人の男が来た。
彼はすぐにだ。家康のいる岡崎に向かった。
そしてだ。その城に向かいだ。護りを固めている足軽達にこう言った。
「いいだろうか」
「むっ、誰だ?」
「何者だ?」
「伊賀の服部半蔵という」
名をだ。名乗るのだった。
「家康公に御会いしたい」
「伊賀?」
「伊賀というと」
「そうだな。まさか」
「忍の者か」
「そうだ、わしは忍だ」
まさにだ。そうだというのだ。
「その忍の者が家康殿に御会いしたいと伝えてくれ」
「そういえば我が殿は」
「今忍の者を求めておられるな」
「是非共。一人は欲しいと」
「そう仰っているが」
「わし一人ではない」
服部は微笑みだ。足軽達にこうも話した。
「わしの部下達もおる」
「その者達も徳川に入る」
「そういうことか」
「棟梁のわしが入るのだからな」
それも当然だというのだ。主の彼が入るのならだ。
「だからだ。是非だ」
「ううむ、それではだ」
「殿のところに案内しよう」
「今からな」
「頼む」
足軽達の言葉に応えそうしてだった。服部は家康の前に連れて来られた。そうしてだった。
家康に拝謁するとだ。すぐに彼にこう言われた。
「忍の者ならばじゃ
「はい、何でしょうか」
「術は使えるか」
忍術はだ。どうかというのだ。
「それはどうじゃ」
「今ここで御覧になられますか」
「そうしたい」
家康は服部を見ながら答える。
「そのうえで用いるかどうかを決める」
「さすればですか」
「どうじゃ。できるか」
「では早速」
こう応えてだ。まさにすぐにだった。
服部は姿を消した。家康の前からだ。
そしてだ。何処からかこう言うのだった。
「まずは姿を消しました」
「そうしたか」
「次にはです」
どうするかだ。今度は。
また出て来た。しかしすぐにだ。
その身体が五つに分かれる。その姿になってだ。
顔を上げてだ。家康にこう話した。
「これは如何でしょうか」
「分け身か」
「こうしたこともできます」
「忍術は一通り身に着けているか」
「伊賀の棟梁の一人として」
「伊賀は近頃」
どうなっているか。そのことは家康も知っていた。
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