第五十三話 徳川との盟約その十
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「かなり変わった御仁というが」
「変わったどころではないぞ」
こう話されていく。
「あの御仁はそれこそ奇人じゃ」
「奇人か」
「そこまでの方か」
「うむ、そうじゃ」
こう話されるのだった。
「しかしそれがよいのだろうな」
「そうじゃな」
「わし等にしても奇人じゃ」
「変わり者ばかりじゃ」
「ははは、確かに」
こうだ。彼等は笑いながら言う。見ればだ。
その服装はどれも異様なものだ。傾いているどころではない。
しかもだ。中にはだ。
肌が白い者や黒い者もいる。明らかにこの国の者ではない者達もいる。
その彼等がだ。口々に話すのである。
「それで他人をとやかく言うのもな」
「言えた義理ではないな」
「うむ、その通りじゃ」
「それにじゃ」
さらにあるというのだ。
「変わっておるということは個性でもある」
「強い個性があればな」
「それがそのまま人を惹きつけるものになる」
「織田殿は実際に多くの者を集めておる」
「ならばよしじゃな」
「そうじゃな」
こうそれぞれ言うのである。
「織田殿のその強烈な個性が天下を治めていくか」
「ではこの飛騨もか」
「織田殿の下に入るか」
「そうなるかのう」
「さすればじゃ」
彼等のいる飛騨がそうなればだ。どうするか。
彼等は暗がりの中でだ。そのことを話し合う。
「我等はどうする」
「おそらく美濃が織田殿の手に落ちれば」
「三木殿は織田殿に従うな」
「それ以外にはないからのう」
三木とは飛騨を治めている家だ。だが飛騨は山奥にある貧しい国だ。それに対して織田は美濃も手に入れれば二百万石を優に超える大勢力になる。そうなればだ。
三木氏の選択はなかった。二つしかだ。
「一つは戦って滅びる」
「もう一つは従って生き延びる」
「では。選択はのう」
「一つしかないわ」
そのだ。選択肢はというと。
「織田殿に従うしかない」
「三木殿は滅びを選ばれる方ではない」
「さすればじゃな」
「織田殿に従う道を選ばれる」
「それしかないな」
こう話していってだった。彼等はだ。
自分達はどうするべきか。このことも話し合うのだった。
「ではわし等はじゃな」
「一体どうするべきか」
「そもそも三木殿に仕えてはおらん」
独自の勢力の様だ。彼等は。
「さすれば我等は我等の道を選べる」
「問題はその道じゃが」
「さて、どの道にすべきか」
「それじゃな」
「このまま飛騨にいてもだ」
ここでだ。一人が言った。
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