人狼の忌み名
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かれたって聞いてるけど」
どうやら正太郎は以前、ファンゴに尻をどつかれて酷い目に遭ったらしく、それは今でも笑い種になっているらしい。その時の様子を思い出したのか、梓と椿が笑う。
「実はね……あっ!?」
尻に少しでも衝撃が伝わらないように前屈みになって歩く正太郎の姿を思い出したのか、神無が笑いをこらえながら答えようとして、自分が何故ここに立っていたかを思い出す。
既に空は暗くなり始めている。悠長に話などしている場合ではない。神無は久しぶりに友人に会えた事で今の状況を見失うという、自分の迂闊さに真っ青になった。
「……ヴォル君!」
「!? ちょっと神無落ち着いて! 着物のままで外に出ちゃ駄目よ!」
焦燥も露にそのまま村の外へ走り出そうとする神無を、梓は彼女の腰にしがみ付いて止める。
「放して! ヴォル君が!」
「だったらまずは落ち着きなさい! じゃないと出来る事も出来ないわよ!?」
「出来ないの〜!」
しがみ付く梓と前に出て道を塞いだ椿の言葉に、神無は我に返った。
「実はね……」
神無は幼馴染がユクモに戻って来た事と、彼が何かを気にして村を出たきり戻らないという事を二人に簡単に話した。
「……無謀ね。夜の山道は拙(まず)いってのに」
梓が既に黒いシルエットになりつつある森の入り口を睨みながら言う。
「で、あんた達は皆、武器と装備を全て預けちゃったって?」
「……うん」
梓の叱責混じりの問と、言葉よりも雄弁に責めてくる視線に晒された神無は、力なく答えることしか出来なかった。
「無理無茶無謀の三セット〜あうっ!?」
「今から村のハンター……すぐに動ける人だけをを集めて。探しに行くのはそれからよ!」
呑気に言う椿にデコピンをしながら梓が答えた。隣で額を抑えて涙目になっている椿は無視するし知らない。
「うん!」
それを聞いた神無が嬉しそうに答えると集会場に向かって走り出す。
「それと目的達成の号令信号も忘れないで!」
神無が振り向いて了解のサインを出すのを見届けた梓は、背負っていた武器を降ろし調子を確かめる。弓だ。矢の数や、液体の入った小瓶の中身も確かめる。
それを見た椿も背負っていた自分の武器を降ろした。鉄の塊に木の棒を差し込んだだけのそれは狩猟用ハンマーだ。突起部分を軽く小突いて確かめる。
「うん。大丈夫ぅー」
「こっちもよ。それにしても、一体何なのかしらね? 無理無茶無謀の三点セットを地でやってのけるお馬鹿さんは……」
「正太郎さんでもやらないー」
「あの人は口先の割には臆病だものね。でも……」
夜……モンスターが昼間より危険になる事は、朝になれば日が昇る事と同義な程の常識だ。それすら分からない者が生き残れる訳が無い。
だが、それを分かっていながらも自ら……それも単独でモン
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