人狼の忌み名
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あれから何時間が経ったのか、最早分からなくなってきている。大人しく夕御飯を作っておくべきだったか……様々な想いが彼女の頭の中を過ぎっていく。
今、彼を探しに森の中へ行くわけにはいかない。彼女たち三人は全ての武器防具を加工屋に預けてしまっているのだ。丸腰でモンスターの巣窟に行くなどとんでもない。言語道断だ。
「あれ? 神無じゃない。何やってるの?」
「の〜?」
「え?」
モヤモヤと考え事をしているところで自分を呼ぶ声に我に返る。
そこには二人の少女がいた。
一人は白いカチューシャを付け、腰近くまで伸ばされた赤みがかった茶色の髪が印象的な小柄な少女だ。そのアーモンド形の茶色の瞳には強い光が宿っており、いかにも気の強そうな雰囲気を出している。
もう一人は彼女より少し背の高い少女だ。大きな丸眼鏡を掛けており、肩に付くくらいの長さの色素の抜けた綺麗な髪と、右側頭部で髪をひと房結んだ桃色のリボンが印象的だ。相方に比べておっとりした雰囲気をまとっている。
「梓(あずさ)ちゃんに椿(つばき)ちゃん。戻ったの?」
神無の顔が、華が咲いたような笑顔になる。
「ええ。……戻って来たというよりは、また来たの方が正しいんだけどね」
梓と呼ばれた、カチューシャを付けた少女が答える。
「あ、そうだったね。今回はどうしたの梓ちゃん?」
「湯治客の護衛でね。でも、しばらくはここでお世話になるかな? 街まで降りた所ですぐに仕事が来るわけじゃないし」
「それで、ユクモで仕事を請けるのー」
眼鏡の少女が答える。こちらの少女が椿というらしい。
「そうなんだ。良かったらまた皆で行こうね」
「ええ。寧ろお願いしたいくらいよ。初級二人じゃ頼りないしね」
「私達もまだ初級なんだけど……」
梓が肩を竦めつつ言った言葉に苦笑しつつ、神無が答える。
「戦いは数だよー。二人だと追い返すので手一杯だもん」
椿がのんびりとした口調で言う。間延びした話し方は実に性格が現れている。
「五人もいればアオアシラでも何とかなると思うし……そういえばやけに静かね。小野寺はどうしたの? 出くわす度に聞きたくも無い暑苦しい謳い文句を綴り上げるのに」
梓は本人がいないのを良い事に辛辣に話す。……普段からこうなのかもしれない。
「あはは。正太郎さんなら今伸びてるよ」
「伸び……? え? お餅みたいになっちゃたのー?」
神無が苦笑しつつ答えると、椿は的外れしまくった答えを口にする。脳裏で正太郎の五体が軟体のように伸びまくった姿を想像したのだろうか。
「違うわよ椿。気絶しちゃったって事よ」
「……残念」
そんなに文字通り『伸びてしまった』正太郎が見たかったのだろうか。椿は非常に残念そうな顔をする。
「今度はファンゴに頭突きでもされたの? 前回はお尻をどつ
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