人狼の忌み名
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それらを見た者の誰かが仰ったのですわ。『アイツは人間じゃない。獣……人狼だ』……と」
その強さの一端は彼女たち三姉妹は目撃している。
「そんな……」
「酷いです。ヴォルちゃんは優しい子なのに……」
神無と夏空は今にも泣きそうな顔になっている。
「嫉妬からくるその他諸々の余計なモノね。そこから来るモノがヴォルフに対する先入観となって、アイツの人格を見ようとしないのよ」
「その通りですわ」
小冬の言葉を村長が肯定する。
「確かにヴォルフさんはお強いですわ。ですがその強さの代償に他人との触れ合い方を学ばずに育ってしまったのでしょう。ですから、人に自分の心を見せられない。他人の心が理解出来ない。ヴォルフさんもあの性格から見て、誰かに自分を理解して貰おうとしなかったも、原因のひとつなのでしょうけど……」
故に人狼。人でありながら人ではない何か。理解する者も無く、自身の居場所も持たず、あても無くただ彷徨い刃を振るう者。人でありがなら人ではなく、獣でありながら獣ではない。まさに異端だ。
「ですが私は今回の件は、他でもないヴォルフ・ストラディスタに依頼しました。それはこの村出身の彼にこの村を救って貰いたいのではありません。彼の居場所はここにある。そう、彼に伝えたいのです」
村長の言葉に、三人は俯いていた顔を上げた。
「ですから、皆でヴォルフさんを受け入れてあげましょう。あの子も戸惑うかもしれませんが、このユクモはあの子の故郷であり居場所なのだと教えてあげましょう」
村長はそう言って三人を見て微笑む。それを見た三人は大きく頷いた。
「なら、ヴォルフさんが帰って来るのをお待ちしましょう。彼の寝床の件も何とかなりそうですし。ね、夏空さん?」
急に話を振られた夏空は最初、目をパチクリとしていたが、村長の言葉の意味が分かったのかニッコリと満面の笑みを浮かべた。
「はい!」
『?』
二人のやり取りが理解出来ない神無と小冬は揃って小首を傾げた。
ヴォルフが姿を消してから数時間が経ち、更には黄昏が訪れて時が経っていた。もう数刻もすれば空には星が光り始め、月と共に地上を照らすだろう。だが、ヴォルフはまだ戻ってきてはいなかった。
ユクモ村の人々は既に、今日の終わりを迎える為に夕食など各々の準備を始めていた。神無も、普段ならば彼らと同じように夕食の準備をしている頃だ。
だが、今日は違った。外すと言って姿を眩ましたヴォルフがまだ戻ってきていないのだ。それで村の出入り口で彼の帰りを待っている。
しかし、村に入って来るのは護衛のハンターを連れた、薪を集めた樵(きこり)や行商人、湯治の客ばかりだった。
夏空は村長と何やら準備する為に、村長と共に村の何処かへと行った。小冬は読み掛けの本があるといって自宅に戻って行った。
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