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人狼と雷狼竜
人狼の忌み名
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りと乗せられた正太郎の大声がそれを遮ってしまう。
「さあ来い! 上級ハンターとやら! 今から決戦場に案内してやるわ! 臆病風吹かせて逃げても文句は言わんぜ?」
 正太郎が思い切り馬鹿にしたような顔付きで俺に言った。アイツ、事の事態を理解しているのか?
「ふっ」
 小冬が俺を見てニヤリと笑う。明らかに楽しんでいるな……。
「ヴォル君……」
 神無が心配そうな顔付きで話しかけてくる。
「安心しろ。怪我をするつもりも、させるつもりもない」
「ヴォルちゃん。ファイトですよ」
 それを聞いた夏空がニッコリと笑って言う。
「気を付けてね?」
 神無は相変わらず心配そうだったが、言われた以上は気を付けるとしよう。
 さて、トラブルの代償はお前のプライドといこうか。ガラスのように砕いてやろう。


 
 正太郎が案内した決戦場とは、ハンター達が普段訓練場として使っている広場だった。
 周囲には山が広がり、矢や銃弾・砲弾を放っても問題無い様な作りだ。ただし、山火事を防止する為に『火気厳禁』の看板が立てられており、火矢と火炎弾や爆薬などの使用は禁止されているようだ。
 休憩場兼詰め所には怪我人の治療や武器の応急修理が出来るようになっており、今現在使用中のハンター達の武器が壁に立て掛けられている。
 ヴォルフが来た時には見物人が十数人とおり、広場の中央には呼び出した当の本人が太刀を背負った背中を向けて仁王立ちしていた。
「良くぞ逃げなかったな! その心意気だけは褒めてやる!」
 そう言いながら振り返る正太郎の言葉を聞きながら、ヴォルフは彼の前に立つ。
 ちょうど、正太郎の太刀の切っ先一尺の間合いの中だ。ヴォルフの刀では明らかに間合いが足りていないが、ヴォルフ自身には大した問題ではない。
「上級ハンターだか何だか知らんが、それがここでも通用すると思ったら大間違いだ! お前の腐った性根はここで叩き直してくれる!」
 言われも無い侮辱を聞き流しながら、ヴォルフは徐に口を開いた。
「目の敵にするのは結構だが、この勝負には全てを掛ける事だ。小冬の言葉、忘れたか?」
「ふん! お前に言われるまでもないわ! 勝っても負けても遺恨なし!」
 そう言って正太郎は背負っていた太刀を抜いた。彼の背丈よりも長い刀身は、夕日を反射して凶暴な光を放っている。
 対するヴォルフは鞘に収めたままの刀を腰に差しただけで、直立不動の姿勢を保っている。傍から見れば、ただ棒立ちしているかのようにも見えた。
「何だその構えは? 馬鹿にしているのか!?」
「お前がそう思うのならば、そうなのだろうな?」
「……っ!」
 ヴォルフの挑発に耐えるくらいの我慢強さはあったようだ。周りに聞こえるくらいに大きな歯軋りをしながらも、見物人の一人を睨むように見た。
「号令を
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