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戦国異伝
第五十三話 徳川との盟約その四

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「御互いに大きくなったというのに」
「ふむ。わしは違う様にも感じるがな」
「織田殿はそうなのですか」
「ああ、その織田殿という呼び方も止めじゃ」
 止める様にだ。家康に話した。
「昔の呼び名でよい」
「さすれば」
「吉法師じゃ」
 己の幼名をだ。家康に言った。
「その名で呼ぶがいい」
「いえ、そうはいきませぬ」
 しかしだった。家康はだ。
 生真面目な調子でだ。こう信長に返すのだった。
「あの頃と今は違いますので」
「そこはじゃな」
「はい。ですから」
 吉法師とはだ。呼べないというのだ。
「そこはそうさせてもらいます」
「ははは、わかった」
 信長は家康の言葉を受け入れてだった。
 笑ってだ。こう返した。
「ではそれでよい」
「はい、それでは」
 こうしてだ。吉法師という呼び方は止めになった。そのうえでだ。
 信長は家康にさらに話す。
「さて、ではじゃ」
「それではですか」
「御主にも息子がおったな」
 既にだ。家康には妻がいる。そしてその間には子もいるのだ。 
 そのことを踏まえてだ。信長は言うのである。
「そしてわしにも娘がおる」
「姫がですか」
「五徳という」
 茶器の名前をだ。そのまま娘につけたのである。
「その五徳とじゃ。御主の息子をじゃ」
「竹千代と」
「共にさせたいと思う」
 家康の目を見てそのうえで提案する。
「それでどうじゃ」
「実はです」
 信長のその言葉にだ。家康もだ。
 一旦姿勢を正し様にしてからだ。その言葉に答えた。
「それがしもそのつもりでした」
「ふむ。それではじゃな」
「我が子竹千代よ」
「わしの娘五徳の婚姻でじゃ」
「両家の盟約の証としましょう」
「そうしようぞ」
 二人で言い合いだ。こうしてだった。
 織田と徳川は盟約を結んだ。その式の後でだ。
 佐久間盛重がだ。家康に言うのだった。場所はもう代わってだ。くつろいだ宴席の場だ。そこで彼は己の席から信長の隣に座る家康に言うのである。
「それがしのことですが」
「大学殿ですな」
 家康も彼にすぐに応える。
「先の戦の時は」
「ははは、徳川殿のご武勇見事でした」
「いえ、それがしもです」94
 家康もだ。どうかというと。
「大学殿達のご武勇にはです」
「それがし達のですか」
「感服を受けました」
 微笑みだ。こう答えるのだった。
「実はあの砦は陥とせると思っていました」
「実際にそれがしだけではそうなっていました」
 大学もこのことは言う。
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