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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十九話 権利と義務
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せに過度に期待している。

制度については知っているだろう、だがその制度の運用の難しさを、欠点を知っているとは言えない。議会制民主主義の欠点と言えば衆愚政治に陥り易い、大衆に迎合し易い等を皆が挙げるだろう。だが俺は問題の本質はそこではないと考えている。

俺の考える議会制民主主義の欠点、それは主権者である国民が聡明で常に理性的な判断を下さないと議会制民主主義は機能しないという事だと思っている。そして責任の所在が極めて曖昧なのだ。

支持率を気にし、選挙で落ちる事を恐れる政治家にとっては主権者がどう考えるかは最重要関心事だ。主権者である国民が愚かで感情的な判断をすれば政治家もそれに引きずられる事になる。そして人間というのは個人では理性的に振舞えても大衆になれば無責任に行動しがちだ。つまり国民主権による議会制民主主義というのは極めて脆弱なシステムだと言える。あるいは人類はそれを運用できるほど成熟していないと言うべきか。

帝国は皇帝主権による専制政治によって国が統治されている。つまり皇帝が悪政を布けば皇帝を殺害する事で帝国は悪政を食い止めた。流血帝アウグスト二世がその例だ。彼は自分の命で悪政の責任を取った、いや取らされたと言える。責任の所在が明確なのだ。主権者である皇帝が暴君でなければ、名君でなくともごく平凡な人間であれば帝国はそれなりに機能した。良くも悪くも責任は皇帝に有る。では同盟はどうなのだろう……。

イゼルローン要塞攻略後、帝国領侵攻により大敗を喫した。サンフォード政権は総辞職する事で責任を取った。あの時、主権者である同盟市民は出兵を否定しなかった。むしろそれを望み後押しした。あの時点で帝国領へ大規模出兵など無謀以外の何物でも無かったはずだ。主権者である同盟市民はそれに対する責任を取っただろうか?

戦争により家族を失ったと言うかもしれない。しかし出兵を支持したことは間違いだったと言っただろうか? 政府、軍を責めて終わりではなかったか。戦争をした事が悪かったのではない、戦争の仕方が悪かったのだと……。自分達が戦争を支持した事についての反省など欠片もしなかっただろう。責任の所在が極めて曖昧だと言うのは此処なのだ。

君主制専制政治も議会制民主政治も主権者が馬鹿では機能しない事では同じだ。違いは主権者が一人か多数かの違いでしかない。であれば主権者に責任を取らせやすい君主制専制政治と責任を取らせ辛い議会制民主政治、どちらが政治体制として優れているのだろう。

いずれこの二人には俺の懸念を伝えねばならないだろう。その上で帝国の統治体制をどうするか考えてもらう。まあ今日は此処までだな。本当は俺が細かく指示を出した方が早いのだろうがそれでは駄目だ。俺が目立つのは拙いしこの二人には色々と考える事で成長してもらわないと……。リヒテンラ
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