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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十九話 権利と義務
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議員全体の三分の一がそういう人間で占められるんです。帝国の危機、過言ではないでしょう」

厳しい言葉だ、言葉だけではない口調も視線も厳しいものになっている。私もブラッケも反論する事が出来ない。
「自分達の選んだ代表が反帝国活動をしているとなれば旧同盟市民は何時までたっても旧同盟市民のままです、決して帝国臣民にはならない。帝国は同盟を滅ぼし銀河を統一する事は出来ても統治には失敗したことになる。それでは何の意味もない」

司令長官が溜息を吐いた。焦っていたのだろうか……。改革を進めるにつれ帝国臣民は改革を支持し協力してくれるようになっている。だから参政権を与えれば同盟市民も協力をしてくれると甘く見てしまったのだろうか……。

足が地についていない……、司令長官の言葉を思い出した。私もブラッケも改革を急ぐあまり同盟を占領するという事を、同盟市民の感情を軽視した。司令長官やリヒテンラーデ侯から見れば私達は改革を行なう事のみに囚われ国家の危機を見過ごした愚か者に過ぎないだろう。

「では、我々はどうすればよろしいのでしょう。帝国臣民の声を政治に反映させる、皇帝による暴政を阻止する、そのためには議会政治を取り入れる事が必要だと思ったのですが……」
我ながら声が暗い、ノロノロとした口調になった。隣にいるブラッケも肩を落としている。先程までの意気込みは何処にもない。

「議会政治そのものを否定する必要は無いでしょう。問題は人ですね、議員を誰がどのようにして選ぶか……。帝国臣民としての義務を果たす人間を選ばなくてはならない、そこをどうするかでしょう」
「なるほど」

諦めるのは早い、司令長官は議会政治の導入を否定してはいない。問題は人か……。選挙では駄目だという事だな、それにかわる選出方法を考えなくてはならない……。



帝国暦 489年 3月 28日  オーディン   宇宙艦隊司令部  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



意気込んで来たかと思えば落ち込んだか……、まあ気持ちは分かるがな。皇帝の権力乱用を抑えるために議会制民主主義を取り入れる。悪い発想じゃない、二人が考えたのはアメリカの大統領制に近いだろう。皇帝は終身の大統領で血統によって選出されると考えれば極めて似ている。

しかし併合直後の旧同盟市民に選挙で議員を選ばせるなど無謀にも程が有るだろう。外国人に参政権を与えるようなものだ。しかもこの場合、ちょっと前まで戦争していた国の人間に参政権を与える事になる。足が地についていないよ。理念が先走ってる。

この二人は帝国に生まれた、だから帝国の歴史には詳しい。皇帝の暴政がどれだけの悲劇を生み出すか良く知っているし、それが起きる事を恐れている。問題はこの二人が議会制民主主義について良く知らない事だ。そして良く知らないく
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