第五話 初陣その十二
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「織田信長を害するとします」
「そうしてもらうぞ。ではだ」
「はい、それでは」
「今は」
「散るとしよう」
中央から周囲に告げた言葉だった。
「わかったな。そうするぞ」
「はい、それでは」
「今は散りそして」
「集まるとしましょう」
「またの時に」
こう話をしてだった。闇の中に消えていく彼等だった。闇の中でも何かしら蠢いていた。戦国の世はただ表での戦だけではなかった。
だが信長はそれをまだ知らない。戦の後でだ。足軽達に互いに槍を持たせ競わせてだ。こんなことを言っていたのであった。
「やはり槍はだ」
「どうだというのですか?」
そこに黒々とした髪を髷にした鋭い顔の男が来て問うた。
「足軽達を使って何かを見ておられるようですが」
「所之助か」
「はい」
この男の名を島田秀満という。彼もまた信長に仕えているのだ。信長の下では村井等と共に主に政においてその手腕を発揮している。
「開墾のことでお伺いに来たのですか」
「左様か。そちらはどうじゃ」
「堤を作り水を通しましたので」
島田はそこから話すのだった。
「よい田ができています」
「左様か」
「はい、これでかなりの収穫が期待できます」
「それはよいことだ。よいか」
「何でしょうか」
「まずは田畑と街じゃ」
その二つだというのである。
「政があってから戦じゃ。わかるな」
「殿がいつも言っておられることですね」
「左様。民も戦よりも田や町の方がずっとよいものじゃ」
信長は今度は民の立場から述べた。
「だからじゃ。まずは政じゃ」
「わかっております。それでなのですが」
「槍のことか」
「何を見ておられるのですか」
島田はあらためて主に問うた。今信長は城の廊下にいる。そこから庭で何やら二手に別れそのうえで槍を競わせている足軽達を見ていた。島田はその主に問うたのだ。
「槍と仰いますが」
「短い槍と長い槍を競わせておったのじゃ」
信長はこう島田に述べた。
「どちらが上かとな」
「そして長い方でしたら」
「そうじゃ。やはり長い方が先に敵に当たるし威力もある」
見れば槍の先は丸くなっていて刃はない。だが長い方が短い方を叩き突いてだ。そのうえで退けていたのである。信長は今もそれを見ていた。
「だからじゃ。これからの槍はじゃ」
「長くされるのですね」
「うむ、そうする」
断言であった。
「それでどうじゃ」
「はい、それで宜しいかと」
島田もこう答えるのだった。
「それがしからも見ましたところ」
「長い槍じゃな」
「その方がいいかと」
「よし、それではこれからの我が軍は槍を長くする」
信長は意を決した声で言った。
「それでよいな」
「畏まりました」
こうしてだった。信長の兵はこれ以降長
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