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久遠の神話
第十六話 上城の迷いその十一
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 そうしてだ。こう答えたのである。
「やっぱり」
「戦わないか、剣士とは」
「はい・・・・・・」
 こう答えてだ。己の剣を消した。そうしてだ。
 中田に顔を向けてだ。言うのだった。
「剣士の方とはどうしても」
「そうか。わかったぜ」
 中田もだ。それを聞いてだ。
 その紅い二刀を消した。そのうえで上城に言うのである。
「じゃあまたな」
「僕は間違ってるんでしょうか」
「間違ってるとかそういうのはないだろ」
「ないですか」
「何が正しくて間違ってるかなんて誰にもわからないんだよ」
 少し真面目な顔になってだ。中田は上城に話すのだった。
「戦いについてはな」
「正しいこと、間違っていることは」
「剣士は十三人いてそれぞれの目的があるだろ?」
「僕もですね」
「戦いを止めるって目的があるよな」
「はい」
 その通りだとだ。中田に対してこくりと頷いて答える上城だった。
 そしてだ。こうその中田に話すのだった。
「そのことはどうしてもです」
「成し遂げたいのな」
「正直何の意味もないと思います」
 戦い、剣士同士の戦いは彼にとってはそうしたものだった。
 だからこそだとだ。それで言うのである。
「目的はそれぞれでしょうけれど」
「俺もな。戦わなくて目的が達成できるんならな」
 家族のことは話さない。決してだ。
 そのこと、彼自身の目的を隠したままだ。中田は話すのである。
「それに越したことはないさ」
「そうなんですか」
「俺の剣道だって活人剣さ」
「そういえば中田さんもですね」
「試合に勝つ為とかの剣じゃないんだよ、俺の剣道は」
「活人剣だからですね」
「前に叩きのめしてやったあの屑教師みたいにはなりたくないしな」
 そうした意味であの教師は最高の教師だった。反面教師としてだ。
「ああなったら人間おしまいだろ」
「はい、確かに」
「だからな。戦わないに越したことはないさ」
「それでも戦うしかないからですか」
「そういうことさ。まあ仕方ないさ」
 苦笑いで言う中田だった。
「選択肢がそれしかないからな。俺の場合は」
「戦うしかないからですか」
「だから俺は戦う」
 中田はまた上城に話す。
「それではな」
「僕は。それでは」
「君は君で考えて結論を出すんだな」
「僕自身で、ですか」
「戦わないことを続けるなりどうなりとな」
「戦うこともですか」
「それも一つの選択肢だろうな」
 中田はその選択肢を否定しなかった。そのことはだ。
 そう話してだった。彼はだ。
 上城に微笑みだ。そして言ったのである。
「まあゆっくり考えてな」
「そうしてですか」
「決めるといい。じゃあな」
「今日はこれで、ですね」
「またすぐに会おうな。俺は大学に戻るからな」
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