第五十二話 青と黄その十
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「地味ですが一つ一つを確実に為されておられます」
「そうじゃな。竹千代らしいわ」
そうした政がだ。実に家康らしいというのだ。
「わしは万事において派手にするがあ奴は地味に少しずつやっていく」
「殿もそこは学ばれるべきです」
すぐに平手の小言が来た。
「とはいっても見事に治められていますからよいですが」
「そこはそれぞれのやり方じゃ。しかしじゃ」
どうかというのだ。信長は。
「その地味な竹千代が黄色か。しかも堅物揃いの三河衆もじゃ」
「確かに。それはです」
「少し驚きます」
「しかしその黄色の徳川殿がこの清洲に来られ」
「我が織田と対面しますな」
「青と」
家臣達は既にその青の正装である。無論信長もだ。
青に統一されたその服でだ。主の座におり言うのだった。
「面白いのう。しかしこの青がじゃ」
「一体どうなると」
「これからですな」
「そうじゃ。一気に美濃を攻め落とし」
そしてだった。さらにだ。
「上洛するぞ」
「はい、それではその上洛の為にも」
「徳川殿との盟約を成功させましょう」
「この清洲で」
そのことも言い合いだった。彼等は家康と三河衆を待つのだった。
その彼等を見てだ。甲斐ではだ。
信玄がだ。二十四将に対してだ。こう話すのだった。
「美濃がいよいよ織田のものになるぞ」
「徳川との盟約を成功させればですか」
「東の憂いもなくなりですな」
「遂にあの国をですか」
「手中に収めますか」
「そうなるわ。美濃はじゃ」
その国はどうかとだ。信玄はこのことも話した。
「都に向かう道じゃ。しかも豊かじゃ」
「八十万石はあります」
「それだけの国を手中に収めれば我が武田は天下一の勢力になります」
そうなるとだ。二十四将達も話す。
「やはり手中に収めたいですが」
「それはできませぬか」
「北にあれがおるしのう」
謙信だった。何故信玄がその力以上に国を大きくできなかったのか。それはこの恐るべき軍神の存在故になのだ、越後の龍のだ。
彼との戦いがありだ。信玄は迂闊に動けないのだ。駿河と遠江を己の領地としたがそれからすぐにだ。謙信がまた川中島に来たのだ。
それですぐに兵を返したのだ。そうした事情があるのだ。
そのうえだ。信玄はこうも言うのだった。
「治めてからじゃ」
「駿河や遠江をですな」
「全てはそれからですな」
「美濃に攻め入るにしても」
「そうじゃ。まずは政じゃ」
政を第一に考える信玄らしい言葉だった。
それでだ。彼は言うのだった。
「国を万全に治めてからじゃ。攻めるのはな」
「だからですな」
「今は美濃に兵を進めない」
「決して」
「そうじゃ。焦りは禁物じゃ」
焦ることもしない。信玄はこのことも強く戒めていた。
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