第十六話 上城の迷いその十
[8]前話 [2]次話
「そうしてですね」
「そうだよ。力を使うんだよ」
「ですね。そうしたら」
「この巨大な猪だって倒せるんだ」
これが中田の狙いだった。
「外がどれだけ強くても中はどうだ?」
「猪の中ですね」
「外の毛皮は確かに凄いな」
「はい、その筋肉も」
「まさに弾丸だよ」
実際にだ。猪は今も弾丸の如く二人に突っ込んで来る。既に駆けだしている。
それを見据えながらだ。中田は上城に話すのである。
「巨大な、な」
「そしてそれに対して」
「ああ、今度はかわしてからな」
ここまでは同じだった。かわすことはだ。
しかしだった。今回はだ。
「剣を掴んでな」
「はい、それじゃあ」
「それから術を使う」
そうするというのである。そしてだった。
また来る猪だった。その猪を見てだった。
中田は再びだ。上城に言ったのだった。
「よし!」
「はい!」
「今度もだ、かわすんだ!」
「了解です」
こうしてだった。二人共だった。
今回もかわした。やはり紙一重だった。しかしだった。
「その猪の首のところに刺さっている剣を握ってだった。一気にだ」
二人はそれぞれツ術を使いだ。そうしてだ。
炎に水を注ぎ込む。怪物の中に。それを受けると。
怪物の突進が止まった。まるで機械仕掛けの人形の電池が切れた様に。
そしてだった。その口や耳からだ。
煙、火と水のものを出しそうしてだった。怪物は悶絶した顔でだ。
がくりと崩れ落ちだ。そのままだ。
怪物はゆっくり倒れる。そして地面に着いたところで消えた。
その後には黄金が残る。その黄金を見てだ。
中田はだ。こう上城に話したのだった。
「じゃあ金はな」
「僕はいいです」
「いや、そういう訳にはいないからな」
「ですが本当に」
「一本だけ貰ってくれよ」
微笑みだ。中田に言うのである。
「後は俺がな」
「そうしてですね」
「その一本は君が好きにすればいい」
「寄付なり何なりですか」
「ああ、それはな」
そしてその他はというのだ。
「けれどそれ以外は俺が貰う。これでいいか」
「わかりました。それじゃあ」
「これ一本で大体百万なんだい」
「高いんですね、案外」
「そうだな。それはな」
「ですよね。それじゃあ」
上城は手を出して一本だけ手にした。そしてその他はだ。
中田が受け取った。そうしてから彼は上城に話した。
「さて。これからどうするんだい?」
「今からですね」
「怪物は倒したさ」
「そしてですか」
「俺はいいぜ」
楽しげに笑ってだ。上城に言うのである。
「戦いたいのならな」
「僕は」
中田にそう言われてだ。上城は苦しい顔になり俯いてだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ