第五十二話 青と黄その七
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「即座に斬る」
「そうですな。その時はです」
「我等もまたです」
「殿を御護りします」
「何があろうとも」
「頼むぞ。その時は」
こんな話をしていたのだった。そしてだった。
雪斎がだ。ふとこんなことを言った。
「松永ですな」
「和上知っておるのか」
「氏素性は知りませぬ」
彼にしてもだ。それは知らなかった。
だが、だ。松永についてこう言ったのである。
「しかし妖しいものを感じますな」
「妖しいものか」
「まるでこの世にはおらぬ。いえ」
己の言葉を少し訂正させて。それでだった。
「元よりこちらの世界の者ではないような」
「面妖なことを申すな」
「松永という者が面妖ですから」
それも当然だというのだ。
「やはりそうなります」
「左様か」
「左様です。そして拙僧もやはり」
彼もだ。松永をどう思っているかというと。
「あの者は剣呑に思います」
「油断するなというのじゃな」
「その通りです。くれぐれも」
「何処までも評判の悪い男よのう」
「当然でございます」
池田がそのことを指摘する。
「あそこまでして評判がよければそれ自体がどうかしております」
「まあそうじゃな」
「だからこそ我等もあの男を警戒しております」
「若しあの津々木の如き者なら」
この男の名はここでも出る。
「恐ろしいことです」
「津々木と申す者は」
また話してきた雪斎だった。今度はその男のことである。
「拙僧は知りませぬ」
「わしもです」
「それがしもです」
雪斎の他の今川にいた者達も言う。
「そうした者がいたとは」
「これまた妖しいですな」
「今川の手の者ではないのはわかっておった」
信長はその彼等にこう返す。
「そして斉藤でもないのもな」
「では何者か」
「それがわかりませぬか」
「今もじゃ。そのままだ」
信長は難しい顔で雪斎達に話す。
「誰か調べておるのだがのう」
「黒い服を着ていたそうですが」
雪斎がここで言うのはこのことだった。
「それも闇の色だったとか」
「上杉の黒ではあるまい」
信長はその可能性はすぐに否定した。
「間違ってもな」
「はい、それは絶対にありませぬ」
雪斎もそれは確かと断言する。
「上杉殿の黒は水の黒です」
「しかしあ奴は闇じゃった」
「水と闇は違います」
雪斎の言葉が強くなる。
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