第五十二話 青と黄その六
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「問題は松永じゃ」
「あの男ですか」
「その生まれも育ちもわからぬあの男ですな」
「問題になるのは」
「あの者にはよからぬ話が多い」
信長の眉が顰められる。そのうえでの言葉だった。
「三好家が今弱っておるのもな」
「あの男が蠢いているせいですな」
「まことしやかに言われておりまする」
「数奇者とも聞いていますが」
「しかしです」
松永の評判はどうかというとだ。尾張においてもだった。
「やること為すことがどうにも悪辣です」
「信用できません」
「ああした者を家臣に持てばです」
「その者は滅びるでしょう」
「三好の様に」
「ははは、そうやもな」
信長は彼等の言葉にまずは笑った。
しかしだ。ここで彼はこんなことを言ったのだった。
「しかしじゃ。ああした者を家臣にするのもじゃ」
「ですからそれはあまりにもです」
「危険です」
「何時一服盛られるかわかりません」
「ああした者はです」
「そうじゃな。確かに危険じゃ」
信長はこのことはわかっていた。しかしだ。
それでもだとだ。まだ言う彼だった。
「だがそうした者こそ面白いではないか」
「家臣に持てばですか」
「そうだというのですか」
「ああした者を」
「うむ、少なくとも才はある」
それはあるというのだ。伊達に氏素性が知れぬながらもだ。三好の執権にまでなった訳ではないというのだ。松永もだ。
「ではじゃ」
「何時裏切るかわかりませんぞ」
「ああした者はです」
「何時何をしてくるか」
「ですから捕らえたら」
その場合はだ。どうかというのだ。
「すぐに斬りましょう」
「一刻も早くです」
「その場合は」
「しかしその前に会うぞ」
信長は松永をだ。必ず見るというのだ。
そのことはだ。彼等にも強く話すのだった。
「わしの考えは知っておろう」
「はい、どうした者でもです」
「用いるにしても首を刎ねるにしてもですな」
「一度会う」
「そうしてから決められるのでしたな」
「だからじゃ。どちらにしてもその場合は会う」
松永であろうともだ。そうするというのだ。
「わかったな」
「ううむ、しかし用いるとなるとです」
「やはり危険です」
「そうとしか言えませぬ」
「ははは、心配性じゃな」
信長は心配する彼等にまた笑ってみせた。そしてであった。
「わしとて隙は見せぬわ」
「では何かあればですか」
「殿もやはり」
「あの男を」
「若しそういう男ならばじゃ」
どうするかはだ。信長も決めていた。
そしてそのことをだ。ここで話すのだった。
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