Mission
Mission6 パンドラ
(5) ニ・アケリア村 小川の堤防(分史)~ミラの社(分史)
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ーのために成りうる要素」を取り出せるなら、ユリウスは厭わない。
ユリウスは、細い手の平の上に載った銀時計を取った。
「いいだろう。君が俺の『鍵』として働いてくれるなら、あの少女には今後一切手出ししない」
「契約成立ね。――状況失敗だけど」
「?」
「なんでもない。行きましょう」
踵を返したユティを、ユリウスは二の腕を掴んで強く引き留めた。
「どこまで知ってる。いや、どこからどこまで知ってるんだ」
クルスニクの鍵で、さらには骸殻能力者。ユティはエルよりレアリティだ。だからこそ疑念を禁じえない。こんなに都合のいい存在がどこで発生したのか。その「どこ」によっては、ユティはユリウスたちの知らない情報を知っているのではないか。
「教えると思う?」
ふり返らずに言い放たれ、ユリウスはユティの腕を離した。
「ああ……君はそういう奴だったな」
「そうよ。ユースティアは性悪。今頃気づいたの?」
「忘れてただけだ。とっくに知ってたさ」
ユリウスは銀時計を見下ろした。自分の懐中時計と全く同じデザインのこれは、おそらく分史世界の自分の所有物だ。クルスニク一族にとって命の次に大事といっても過言でない品を預けた以上、ユースティア・レイシィはその世界のユリウスにとっては信を置くに足る存在だったのだろう。
ならばもう彼女を無駄に疑うまい。彼女の言う通り、彼女がユリウスの希望の糸なのだから。
戻ってルドガーたちを探していると、彼らは社から下りてきた。それもあの気難しいミラを伴って。
(……どうやったの?)
(まあ口八丁手八丁ってやつで)
エルとミラが離れたところで、ユティはアルヴィンに事情を尋ねる。
ルドガーたちはミラを上手く誘導し、ミュゼのもとへ案内させる算段をつけたらしい。これからニ・アケリア霊山に向かうそうだ。
つまり、ルドガーは仕事のためにミラを騙したのだ。
「これでいいのか」
ユリウスは詰問調でルドガーに言う。ルドガー、それにレイアが、気まずげに目を逸らした。
そんな悩み濃き色の青年と少女の両方に、後ろからアルヴィンが両腕を回して肩を抱いた。
「若者をいじめるなよ。仕事にはこういうこともあるだろ」
「と言うことは、お前は『こういうこと』が珍しくない仕事をしてるわけだな」
「……よくお分かりで」
「兄さん! アルヴィンは」
「いいよ、ルドガー。事実だ。――お前ら先行け。すぐ追っかける」
「君も行け」
「了解。――ルドガー、レイア、行きましょう。エルとミラが待ってる」
アルヴィンから託された二名と手を繋ぎ、引いた。
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