第五十二話 青と黄その五
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それでだ。このことは言えたのだった。
「では三好と全面的に争いますか」
「そうなりますか」
「しかし三好もです」
「かなりの勢力ですぞ」
今度は三好のその勢力の話になる。
「近畿を全て押さえておりますし」
「本拠地の讃岐や阿波もあります」
「その力、決して侮れません」
「かなりのものですが」
「確かに兵は多い」
信長はまずは三好の兵から話した。
「そして石高もな」
「今のところ三好が一番では」
「武田や北条よりも上なのではないでしょうか」
三好は豊かな近畿を掌握している。それならばそれだけの力があるというのだ。
「摂津、河内、和泉に大和」
「して山城もですし」
「それに加えて讃岐と阿波、淡路です」
「六万以上の兵がおりますが」
「その三好と戦いですか」
「そのうえで」
「うむ、退ける」
信長は三好をだ。そうするというのだ。
「おそらくそこで三好は完全に仕留めることはできぬ」
「ですな。それは無理かと」
ここで応えたのは九鬼だった。
「流石に」
「そうじゃ。何故無理かというとじゃ」
「海です」
理由はそこにあると。九鬼は言った。
「海から四国に逃れますので」
「その通りじゃ。もっとも二郎の水軍を使うこともできるがじゃ」
「ではそうされますか」
「いや、よい」
信長はそれは止めた。
「それは今はせぬ」
「左様でございますか」
「御主は今は水軍の数を整え鍛錬をせよ」
「そうしてですな」
「そうじゃ。今は水軍を動かす時ではない」
そうだと言ってだ。今葉よいというのだ。
「三好は今は完全には倒せぬ」
「では完全に倒すその時にこそ」
「左様、水軍を動かす」
そうするというのだ。
「今は三好を近畿から追い出しじゃ」
「そのうえで播磨や丹波をですか」
「手中に収めるというのですな」
「その通りじゃ。三好を退けその兵を手に入れれば播磨や丹波は容易に手に入る」
そのだ。兵の数を使ってだというのだ。
「だからそうするぞ」
「成程、まずは三好ですか」
「あの家を退けることですか」
「要点は」
「そうじゃ。もっとも三好長慶は今にも死のうとしておる」
その当主の命が尽きようとしているというのだ。
そしてそのことがだ。影響するともいうのだ。
「それから三好は面白いことになろうとしておるな」
「はい、三好三人衆と松永久秀がです」
「対立を深めています」
「あのままいけばおそらく」
「衝突するかと」
「そうなれば実に面白い」
信長が言うのはこのことだった。
「まあそうでなくとも攻める時はそこを衝く」
「そうして倒す」
「三好を」
「兵の数が多くとも内で争っていてはどうにもならぬ」
信長が言うのはまさに正論だった。
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