第五十二話 青と黄その三
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「我等は三河者です」
「三河者は忠義によって成る者」
「ですから」
「ううむ、どうやらわしは」
そんな彼等の声を聞いてだった。家康は。
まずは唸りそのうえでだ、満足した笑みでこう言ったのだった。
「過ぎた家臣達を持ったようじゃな」
「いえ、それを言うなら我等がです」
「過ぎた殿を戴いております」
「我等こそです」
「ではあれか」
家臣達の言葉も聞いてだ。それでだった。
家康は首を少し捻ってからだ。こんな風に述べた。
「御互いに過ぎたものを持ち戴いておる訳か」
「むっ、そうなりますか」
「それではですか」
「殿も我等もですか」
「互いに過ぎたものをとなりますか」
「そういうことになるな」
また言う家康だった。そのことを。
「ははは、三河者は誰もが果報者よ」
「そうですな。互いに過ぎたものを持ち戴いておりますから」
「そうなりますな」
「いや、全く」
「そうであるな」
家臣達もだ。笑ってだった。
そのうえでだ。こう口々に言うのである。
「ではその果報者が一丸となり」
「殿を中心として」
「いざ尾張に」
「そうしましょうぞ」
「さて、三河の田舎者達が」
ここで言ったのは岩の様子な顔の男だった。徳川の家臣の一人鳥居元忠だ。家康にとっては頼りになる家臣の一人だ。
その彼がだ。こう言うのである。
「尾張でその心意気を見せましょうぞ」
「いやいや、鳥居殿」
その彼にだ。榊原が声をかけて言うのだった。
「我等は戦で行くのではありませぬぞ」
「ははは、確かに」
鳥居もそのことはだ。笑ってその通りだと言う。
しかしだ。すぐにこんなことも言ったのだった。
「しかし盟約を結ぶ場でも」
「先程の話にあった様にですか」
「左様、決して恥じるようなことはせずにです」
「むしろ織田殿にひけを取らぬ様に」
「そう毅然といきましょうぞ」
これが鳥居の言いたいことだった。そして実際にだ。
彼等は堂々と尾張に入った。そのことはすぐにだ。
清洲の信長にもだ。入ってだった。
そうしてだった。彼はこう言うのだった。
「ほほう、どうやら竹千代は」
「徳川殿ですな」
「実に堂々と尾張に入られたそうですが」
「しかも黄色か」
今度はその黄色の服の話もするのだった。
「いや、何かしらの色でくるとは思っておったが」
「黄色はですか」
「それはですか」
「うむ、思わなかった」
その通りだとだ。信長は言うのだった。
「しかし。あの地味な竹千代にしてはじゃ」
「思いきっておられると」
「そうなのですね」
「竹千代も考えてのことであろうが」
しかしだ。それでもだというのだ。
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