第五十二話 青と黄その一
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第五十二話 青と黄
尾張にだ。派手な色の一団が向かっていた。
その彼等の多くはだ。戸惑いながらだ。こうそれぞれ言っていた。
「ううむ、どうにも」
「落ち着きませぬな」
「いや、全く」
「確かに」
こういぶかしむ顔でそれぞれ話しているのである。
そのうえでだ。彼等はだ。先頭にいる自分達の主を見る。
そうしてだ。彼に尋ねるのだった。
「あの、殿」
「やはりこれでは」
「目立ち過ぎませぬか」
「どうにも」
「目立つからよいのじゃ」
しかしだ。その彼等の主である家康はこう言うのだった。
そのうえでだ。彼等に自分から言った。
「織田殿にしろそうではないか」
「はい、織田殿といえば青です」
「それはです」
彼等もこのことはすぐに答えられた。
「桶狭間でも見るもの全てが青でしたし」
「ですから織田の軍勢が動くとです」
そのだ。彼等が動くとどうかというのだ。
「まるで海が動く様だとか」
「そこまで青いと」
「そうじゃ。織田殿は青じゃ」
家康はまたこのことを話した。
「して我等を囲む家々もじゃ」
「武田は赤、北条は白」
北条には囲まれてはいないがそれでも影響を感じているのも確かなのだ。その関東を席巻している彼等はなのである。
「そうした家に対してですか」
「我等も」
「そうじゃ。そう考えてじゃ」
黄色にしたのだとだ。こう言うのである。
「あえてな。黄色じゃ」
「あまりにも目立つが、ですね」
「それでもと」
「この場合は目立つ為に決めた」
まさにそうだという家康だった。
「だからこその黄色よ」
「それに加えてですな」
ここで家康に言ってきたのは本多だった。
その彼がだ。こう家康に言う。
「黄色は土の色ですな」
「わかっておったか」
「はい、黄色は五行における土の色です」
五行思想からの言葉だった。まさにだ。
「それもあってですか」
「そうじゃ。徳川は土じゃ」
「青はです」
本多は織田の青はだ。何かともわかっていた。
そしてそのことをだ。今言うのだった。
「五行でいうと木ですな」
「その通りじゃ」
「赤は火、黒は水、そして白は金です」
「むっ、ということは」
ここまで聞いてだった。
その家臣の中でにこにことした髭が全くない顔の男が言ってきたのだった。
「織田殿は木ですな」
「して武田は火、上杉は水、北条は金ですか」
「尚且つ」
榊原もここで話す。
「我等徳川は土ですか」
「その五行思想は揃いますな」
「いや、確かに」
榊原は本多のその言葉にまずは頷いたのだった。
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