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久遠の神話
第十五話 選択その十二
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「ビールには注意してね」
「ああ、これか」
「そう。それよ」
 見れば父の右手にはコップがある。そこにビールが注がれている。彼が自分で缶ビールのそれを注いで飲んでいるのだ。そのビールについてだ。
 妻はだ。夫に言うのだった。
「ビールは痛風になるからね」
「だから駄目か」
「そうよ。飲むのならね」
「ワインか」
「日本酒は糖尿病の危険があるから」
 酒にはそれぞれリスクがある。アルコール以外にもだ。
「だからよ」
「母さんは厳しいなあ」
「お父さんの身体のことを考えてよ」
「わかったよ。じゃあ今日はこれ一本で終わりだ」
「そうしてね」
「まあそれでもだ」
 妻との話を終えてその話の内容故に苦笑いになってからだ。
 父は我が子にあらためてだ。こう言うのだった。
「飲める時は飲め」
「そうすればいいんだ」
「そうだ。それが人を幸福にする元だからな」
「大樹も飲むのならワインよ」
 八条町は酒には寛容だ。だから未成年が飲んでも特にいい。母が言うのはその飲む酒のことだった。
「それが一番身体にいいから」
「そうだね。じゃあ飲む時はね」
「そうしてね」
「そうだね。じゃあ今はね」
「飲むの?」
「やっぱりいいよ」
 こう言って断るのだった。
「御飯だけでいいから」
「わかったわ。それじゃあね」
「うん。それでもお酒は」
「そう、考えて飲まないと駄目なの」
 こう我が子に話すのだった。
「飲むお酒も量もね」
「全く。ビールは悪者みたいだな」
 そのビールを持っている父が苦笑いになる。
「やれやれだな。本当に」
「お父さんもワインにすればいいのに」
「ワインを扱ってるからどうもな」
 仕事でだ。そうしているからだというのだ。
「家に帰ればどうしてもな」
「ビールがいいの」
「ソムリエも大変なんだ」
 父の仕事はそれだった。実はワインのソムリエなのだ。
「ワインにずっと触れてないといけないからな」
「だからたまにはなのね」
「ああ、浮気をしたくなるんだ」
 その具体的な相手がビールだった。
「こうしてな」
「浮気は駄目よ」
 そんな父にだ。母は厳しい声で釘を刺す。
「特に女の人にはね」
「わかってるさ。父さんはそんなことしないよ」
「絶対によ」
「わかってるわかってる。全く母さんは厳しいな」
「当たり前よ。家庭を守るのが仕事よ」
 だからだというのだ。
「家族のことはちゃんとしないと」
「そうだな。じゃあビールはこれで止めてな」
 父もだ。母のその言葉を受けてだ。
 グラスの中のビールを飲み干してだ。こう言うのだった。
「じゃあ御飯に専念するか」
「そうしてね」
「じゃあ僕も」
 母のお代わりを受けてからだ。上城は言いだ。
 その白い御
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