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久遠の神話
第十五話 選択その十
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「僕はね」
「じゃあやっぱりかなり難しいわね」
「戦わず。そして逃げないのは」
「こういうことできない?」
 樹里はふとだ。彼に言った。
「ええとね。相手を倒さずに勝つのよ」
「倒さないで」
「そう、その命を奪わないの」
 具体的にはそういうことだった。
「それはどうかしら」
「そのうえであれだね」
「そう、相手の剣士の人に戦いから退いてもらう」
 この戦いのルールの一つだった。戦いから離脱する方法は三つあった。
 一つは最後まで勝ち残り勝利者となること、一つは戦いの中で倒れること、そして残る一つは戦いを放棄すること。その三つだった。
 その三つのうちだ。最後を相手に取ってもらえばどうかというのだ。樹里はこう提案したのだ。
 それを聞いてだ。上城はだ。考える顔になってだ。 
 静かにだ。こう答えたのだった。
「それもありかな」
「ありっていうかそれしかないんじゃないかしら」
 真剣に考える顔でだ。樹里は述べた。
「逃げるのも嫌だったら」
「戦ってそうして」
「そう、勝つには勝つけれどね」
 しかしそれでもだというのだ。
「相手の人の命は奪わないのよ」
「僕は人を殺したくないんだ」
 このことはどうしてもだった。彼にとっての剣は活人剣だからだ。
 それで戦いを避けていた。しかし樹里の今の話を聞いてだ。
 彼は考える顔でだ。こう言ったのだった。
「けれどそれなら」
「そう、今のままよりもずっと楽よね」
「それに楽になったら」
「その分だけ生き残ることが簡単になるわ」
 ひいてはそうなるのだった。だから樹里も言うのだった。
「だから。どうかしら」
「それしかないのなら」
「そう、結局戦いを止めるにはよね」
「うん、最後まで生き残らないと駄目なんだ」
「だったら。それもね」
「生きる為に」
「そう、考えてみて」
 上城の顔、横にいる彼のその考えている横顔を見てだった。
 樹里は言う。彼女も真剣だった。
「そのやり方もね」
「戦うこと自体は」
「それも好きじゃないわよね」
「けれど戦い方にもよるかな」
「スフィンクスもかなり難しくて見てみたいって言ってたけれど」
「それはできるのかな」
 真剣さをさらに増してだった。上城は離した。
「果たして」
「またスフィンクスと会ったら話してみる?」
「そうしようか」
「色々と考えてそうして結論は出すものだし」
 こんなことも言う樹里だった。
「だからよくね」
「そうだね。すぐに決めてそれで済む様な話じゃないし」
「むしろ。すぐに決めたら」
「かえってよくないことだよね」
「じっくり考えて。私もいるから」
 樹里は戦う上城の力になりたいと思いだ。言うのだった。
「だからこそね」
「うん、少し考えさせてもら
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