第十五話 選択その六
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「けれどそれが難しいのよ」
「そうですよね。それは」
「けれど貴方はそれでもその道を選ぶのかしら」
「そのつもりです」
迷いがないと言えば嘘になる。微かにだがあった。しかしそれでもだ。
上城はその迷いを振り払ってだ。スフィンクスに述べた。
「僕は人とは戦いたくありません」
「ではどうして怪物とは戦うのかしら」
「そのことですか」
「ええ。それはそうしてかしら」
スフィンクスが今度彼に問うのはこのことだった。
「人と怪物は違うというのかしら」
「はい、違うと思います」
その通りだとだ。彼はここですぐに答えた。
「何となくですが」
「ではどう違うのかしら」
「力は神話にある通りだと思います」
そのこともわかるとしてだった。さらに述べる上城だった。
「しかしそれ以上にです」
「違うというのね」
「はい、心はないですね」
上城が言うのはこのことだった。
「僕達が戦う怪物達は」
「大抵の怪物はね」
その通りだと答えたスフィンクスだった。
「その通りよ」
「やっぱりそうなんですね」
「ええ。出て来る怪物達は言うならばレプリカ」
「オリジナルの神話の怪物のですか」
「そうよ。そのことは何時わかったのかしら」
「最初の戦いで」
もうその時にだ。おおよそのことを察したというのだ。
「何となくですけれど直感でわかりました」
「鋭いわね。中々」
「目でしょうか」
ここでまた言う上城だった。
「目に光がないといいますか」
「そこね。目ね」
「目には心が宿るといいますね」
上城は昔から、それこそ孟子の頃から言われていることを述べた。
「そう言われていますね」
「そうね。目よ」
スフィンクスもその通りだと述べる。
「目を見ればわかるわ。心がある怪物と心がない怪物は」
「ですから。レプリカですから」
それでだというのだ。
「特に戦っても思うことはありません」
「命を奪うことではないからなのね」
「戦いで命を奪うことは好きではありません」
上城はこのことは毅然として話した。
「僕の剣は活人剣ですから」
「活人剣ね」
「はい、それです」
それこそがだ。彼の剣だというのだ。
「ですから命を奪うことは好きではありません」
「武士道というのかしら」
「武士道ですか」
「何か聖職者みたいな考えね」
「別に聖職者ではないです」
上城はそのことは否定した。
「ですが」
「それでもなのね」
「はい、僕は自分で定めたことは破りたくはないです」
信念だった。それはまさに。
「決して」
「だからこそ戦わないのね」
「そのうえで戦いを終わらせたいです」
「できればいいわね」
期待の言葉だった。スフィンクスの口からの。
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